Long・雪月花

□14.此処にいる理由
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0組は、恐ろしかった
恐ろしく強かった
皇国が"朱の魔人"と呼ぶ理由がそこにはあった

宙を舞うようにそれぞれの武器をふるい戦う彼らは、相手にとっては魔人というより死神に違いなかった



今回のクリムゾンは機密文書の回収任務
第一の目標は要塞の動力室に行って防御システムを起動させること

要塞の外縁部の北門から侵入した私たちは中枢部への入り口がある正門へなかなかたどりつけないでいた


《倒してもキリがないから出来るだけ戦闘は避けるクポ》

COMMから流れるモグの伝令には従いたくても従えなかった


「いったい何人いるのでしょうか…」
私のすぐ近くにいたデュースが溜め息混じりにつぶやいた

倒すたびにすぐにどこからともなく増援がやってくる
これでは消耗戦だ
そうなってしまってはいくら強いとはいえ人数が少ない0組は圧倒的不利だ


「どーやって避けろっつーんだよ!!」
サイスが前方で叫んだ

いくつもの爆発音があちこちであがる



どうしようか
私にはこの状況を抜け出す術がある

けれど…できるだろうか?
私なんかに。



右からクァールが飛びかかる
私は上体を反らしてそれを避けた
間髪入れずに左から襲ってきた猛獣にタイミングをあわせてファイアをぶつける

「…ごめんね」
爆風が朱いマントを翻す

かざした手の先で悲しそうな鳴き声がした



この超人集団のサポートなんて?
かえって足手まといにならないだろうか?



前方から響いた銃声から逃げるように瓦礫の影へ飛び込む
数秒前に私が立ってきたところの床が派手にめくれた

ちらっと仲間を見ると、みんな息があがっていた


「要塞後方に【朱】を確認!射程に入り次第、攻撃しろ!」
どこからか怒声が聞こえた


このままでは本当にここから動けなくなる
それはつまり、ミッションの失敗を意味していた
それだけはダメだ
絶対に阻止しなくては。
…挽回するって、誓ったじゃないか。



私は覚悟を決めた
瓦礫に背を預け、銃声の嵐の中
震える指でCOMMの音声発信ボタンを押した




「…みなさん、聞こえますか」





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