Long・Fatalism

□2nd.Encounter
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最近よく見かけるやつがいる。
栗色の髪をした歩き売りの女の子。
知り合いに聞くと、リンドブルム中で商売しているらしい。
安く売ってくれるって評判になってた。
まぁ、知り合いっつってもタンタラスの奴らだけど。
しかもその子、けっこうかわいい。
これは話しかけるしかないよな。
オレは意気揚々といつもその子が通る道に向けて歩を進めた。

私はいつものように歩き売りをしていた。
午前のまだそれほど強くない日差しを受けながら、人々の間を声をあげながら歩く。
このルートを通り始めて1ヶ月が過ぎた。
そろそろルートを変えないと…
知り合いができてしまう。
そんなことを考えながら噴水のある少しひらけたところにでた。
「いらっしゃいませー!」
商売は好きだ。
いろんな人に出会えるから。
みんなの笑顔が見れるから。
だいたい売れて軽くなったワゴンをひいて歩き出そうとした、そのとき。
「よっ、お嬢さん。売れてるかい?」
金髪の人に話しかけられた。
私とそんなに年がかわらなさそうなその人はにこっと笑った。
「おかげさまで」
私も笑い返す。
いつもならここで終わるはずなのに、今日は違った。
「オレはジタンっていうんだ。君は?」
「名前といいます」
「名前ちゃん、よろしく」
ジタンさんはまたにこっと笑った。
綺麗に笑う人だなぁ。
「よろしくお願いします」
でもこれ以上関わるのはいけない。
そろそろ行かなきゃ。
「私、次の場所に移動しますね」
また見かけたら商品見てってください、そう言いかけた私を遮ってジタンさんは言った。
「あのさ、名前ちゃん」
「なんでしょう?」
「歩き売りについてってもいいかい?」
邪魔はしないからさ、と。

困った。
なんて断ったらいいのか分からない。
悪い人ではないと思うけど…
しどろもどろしているとジタンさんはワゴンをひきだした。
「次はどこにいくんだい?」
「あ、あの。お気持ちは嬉しいんですけど、一人で大丈夫です」
ありがとうございます、と笑うとジタンさんは笑顔を一瞬曇らせた。
言い方間違えたかな…
そしてワゴンから手を離して、私の方を向いた。
「そんな寂しそうな顔してる女の子、一人にしておけないだろ?」
「え?」
寂しそう?
私が?
まさか。
心が波音をたて始める。
「だから一緒に行こうぜ」
一緒、はダメだ。
「すみません」
少しだけ頭を下げて、ワゴンをひいて歩き出す。
ジタンさんはもう追ってこなかった。

しまった。
歩き去っていく名前ちゃんの背中を見てオレは絶賛後悔中だった。
寂しい、は禁句だったのか?
発した瞬間の泣きそうな顔を思い出す。
でもやっぱり。
「…ほっとけないな。」
あんな綺麗に笑える子に涙は似合わない。
また明日も行こう。
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