Long・Fatalism

□5th.Omurice
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「悪かったって!」
「…別に怒ってないです」
「いや、怒ってるだろ!」
まいった、という風に苦笑いをするジタンさん。
カウンターの向こうで思い出して含み笑いをする店長。
…あ、ジタンさんちょっと笑った。
私はふん、とそっぽを向いて湯気を立てるオムライスにスプーンを入れた。
わ…おいしい!
「て、店長さん!すんごく美味しいです…!!」
「名前ちゃんありがとう」
卵がふわふわのトロトロで、濃厚なクリームソースがかけてあるオムライス。
本当においしい。
優しい、味。
「だろ?」
なぜかドヤ顔でジタンさんが言った。
「…ジタンさんが作ったんじゃないですよね??」
「かたいことは無しだ!」
いや、結構重要…と言おうとした私の頭をジタンさんがポンポン、と撫でた。
何事かと彼を見るとニカッと笑った。
「やっぱり名前は笑ってた方がかわいいぜ?」
「え…」
不覚にも頬が熱くなった。
「前も言ったろ?俺が側にいる。名前を、守ってやる」
「だから、そうやって笑ってろ」
瞬間、私の視界は滲みだした。
遠くの方で店長がジタンをからかっている。
心臓がドクドクと音をたてる。
本気、で…言っているのかな…
ぽた。
涙が落ちた。
「あー!ジタンが女の子泣かせた!」
「え?!あ…ご、ごめん名前!」
あれれ?
おかしいな。
涙なんてもう出ないと、思ってたのに。
私ってまだ泣けるんだ…
ぽたぽたぽた。
ダムの放水みたいに涙が流れる。
「…っ!!じ、ジタン…さんっ!!」
思わず私はジタンさんの肩に顔を埋めてしまった。
「…名前、もう独りじゃないんだ。オレのこと、頼ってくれないか?」
優しく言われて、頭を撫でられた。


Omurice

(優しいお味。)





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