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□極彩色ピエロ
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私が泣いていると。
いつのまにか、決まって隣にいるピエロがいるんだ…





ぽつ、ぽつ、と。
四角くかたどられた外の景色が泣いている

その真正面に座っている私もまた涙を流していた


世界が、いやだった

戦争だらけのこの世界が

昨日話していた人の名前を
今朝思い出せなかった
また心に穴が空く

それが、怖かった

クラスメイト達は
明日世界や仲間の記憶から消えることをいとわずに
粛々と出撃していく

私には止めることができなくて
消えにいかないでと自分の意見を言えなくて

それが、情けなかった


私だけ
一人だけ

そんなことで涙を流している
そんな自分が、嫌いだった



「私…誰もいない場所へ行きたいよ…」
そんな呟きが唇からこぼれた


雨が強くなってきた
私と外の世界を隔てているガラスを、雨粒が壊さんばかりに打ちつける

やめて
私を外へ連れ出さないで
お願い、助けて

この残酷な世界から


「助けて…」
助けを求めるその声は虚空に吸い込まれ…




「いいよ」
「…ジャック??」

吸い込まれるその前に
彼に捕まった


「名前を助けにきたよ」


私が泣いていると
いつのまにか、決まって隣にいるピエロが

今日もまた私の隣で笑っていた


「…なんでここに?」
あぁ、ダメだ

「うんっとね、まず勝手に部屋に入っちゃってごめんね」
きみだって同じ残酷な世界にいるのに

「それと、気の利いたこと言えなくってごめん」
きみだって辛い思いをいっぱいいっぱいしてるのに

「だけど、名前がきっと泣いてるだろうなって思ったら…いてもたってもいられなくなってさぁ」

どうしてそんなに笑っているの?
どうしてそんなに強いの?
どうして何回も
私を助けにきてくれるの?

涙があとからあとからでてくる



きみはそれから
私をぎゅっと抱きしめた

私の疑問までつつみこむように
私の涙を受け止めるように


「ねぇ、名前…僕、きみのことがずっと好きだったんだぁ」

きみの声は少し照れくさそうだった
「だからさ、僕はきみのことを守るよ」



見上げると
きみの笑顔が私を見つめていた





その身にまとう極彩色のせいで
きみの悲しみは私には見えない

そのことを分かっていながらピエロのように笑うきみは
やっぱりズルいと思う


思うけれども
私の救世主は…





極彩色ピエロ





(あなたのようだ)






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