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□昼下がり、白昼夢
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キーンコーンカーン…

遠く、昼休みを告げる鐘が響く



「…今日はここまで」
そう言ってクラサメが教科書を閉じた瞬間

「おっしゃあ!!!!昼休みだぜ、コラァ!!」
ナインが雄叫びをあげた

他のメンバーもお昼どうする?、などなど相談をし始めて教室は一気に賑やかになる


その教室から一番に出たクラサメは

今にやって来るだろうある人物を思い、身構えた




「先輩!!せんぱぁーいっ!!」

その人物は、クラサメの予想外のところ…
つまりは上からやってきた

「なっ?!」

彼の端正な切れ目は大きく見開かれ、武官の制服に身を包んだ彼女に向けられる


次の瞬間、クラサメは彼女を抱きかかえていた

「ナイスキャッチです、先輩」
「馬鹿かお前は!!私がキャッチしてなかったら…」


そこまで言って、クラサメはため息を漏らした

「…このやりとり毎日やってるよな」
「そうですね」

にこっと笑いながら彼女は言う


クラサメはその笑顔を見て、目を軽く細める

そしてさっきよりも柔らかい声で彼女に語りかけた


「昼飯、食べるか?」
「うん!!」





数分後
2人は人目のない場所で昼食を広げていた

口いっぱいにご飯をほおばった彼女がニヤニヤしながらクラサメを見る


「…なんだよ」

彼女はご飯を飲み込んでから


「ご飯つぶついてますよ」
と言ってクラサメの頬に手を伸ばす

彼は一瞬怪訝な顔をしたが抵抗はしなかった


「はい、とれた」

「…私の顔に平気で触れるのは名前くらいだ」


「だって先輩ふだんはマスクしてるじゃないですか」

「そういう事じゃなくてだな…」


困ったような、嬉しいような顔をしながら彼は彼女を見る

その視線に気づいた彼女は手元のご飯から手をはなして


そしてクラサメの隣にちょこん、と座った

そのまま彼の肩に体を委ねる


しばらく心地よい沈黙が流れた

周りの喧騒が聞こえてくる…


その喧騒にかき消されそうな小さな声で
彼女は彼につぶやいた


「私、先輩のこと大好きですから」

クラサメはこそばゆいような顔をして
彼女の頭にそっと手を乗せた


「…しょうがないヤツだな」
その手を彼女の髪の毛に沿ってそっと動かす



そして


「…私の隣は名前だけの特等席だ」
と彼もまたつぶやいた




願わくば
この夢のような瞬間よ、永遠なれ





昼下がり、白昼夢






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