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□キミノトナリ。
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軽やかに教室内に響き渡るチョークの音

その音についていくように鳴るいくつもの筆記音

教壇に立つはクラサメ隊長

0組は只今3限目、魔法講義の真っ只中…




私の席は最前列
本来なら一番講義に集中できる席だけれど

教壇上で話す隊長の言葉はすべて右耳から入って左耳から抜けていく


ちらっと時計を見ると、講義終了まではあと13分

私がこれだけ集中できない理由が…


私の隣にいる

バレないようにそっと隣の彼…エースを盗み見た


黒縁の眼鏡をかけて真剣そうに前を見つめる横顔

端整な彼の目が見せるたくさんの表情がたまらなく好きなんだ…


そんなことを考えていたら、いつのまにかこっそり見るつもりがバッチリ見てしまっていたようで

視線を感じたエースが私の方を見た


それまで黒板に向けられていた眼差しが私だけに向けられて…

私の大好きな彼の目が
黒縁窓の奥から私だけを見つめて微笑んだ


吸い込まれそうな白藍色の瞳から私は目が離せなくて…



「名前、どこを見ている」


突然の声に驚きハッと前を見る

すると目の前には鬼の形相のクラサメ隊長がいた


「あ…。す、すみませんっ」
「エースばかり見ていないで少しは黒板を見たらお前の成績も上がると思うが」

い、言われてしまった…
まったくそのとおりで言い返せない私


0組の教室が笑いの渦に包まれる中で、私が顔を赤らめてうつむいていると



左の耳元で、そっと


「…名前、この講義が終わったらな」


優しく、甘く。
囁く君の声がした



ハッと左隣を見ると
エースはまた視線を黒板へと向けていた


こんなに近くにいるのに。

再び時計を見る


あと9分も君をまっすぐに見つめられないだなんて…





近くて遠い
キミノトナリ。






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