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□I with You
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気持ちのいい青空が窓から顔をのぞかせる昼下がり

私はクリスタリウムへと足を運んでいた


こんなに天気のいい日でも
きっと君はそこにいるから。




巨大な扉をくぐり、たくさんの本が詰め込まれた本棚の間を抜けて、下の階にある自習室へと向かう

テスト前でないからか、いくぶん候補生の数は少なく感じた


階段を下りきり、少し奥へと行くと

…やっぱりここにいた。
いつもの席に、見慣れた金髪の彼の姿


私はなにやら分厚い本を読んでいる彼の前へと歩み寄る



「…トレイ」

「ん?」


すっと本から離された彼の目線が私の目線とぶつかり合う

「あ、名前でしたか」

微笑みながら彼は言った


そして開いていた本を閉じる

古ぼけたその本の表紙にはなんとなくタイトルの跡のようなものがあったが、かすれていて読めなかった


「何読んでたの?…かなり古くて分厚いね」

「これですか?まぁ一言で言えば哲学書ですね」

「哲学書??」

「えぇ。昔の人の人生観や世界観が書いてある本です。もっと言うと…幸せになる方法とか、どう生きたら正しいのか、などが書いてあります」


そう言いながら彼はその本を本棚へと返した

「へぇ…。あ、読書続けてていいよ?私ここにいるから」


一緒に出かけられないのは残念だけど、トレイの読書の邪魔をしてはいけないな…

そう思って彼の座っていたイスの隣に座る


そんな私を見て彼は再び微笑んで
私のそばまできて、ぽんっと右手を私の頭の上に置いた

そしてそのままくしゃくしゃと頭を撫でられる


「??」

私は目の前の彼を見上げた



「難しい哲学書を読むより、大好きな人の1秒の笑顔を見るだけで私は幸せになれるのです。名前…あなたが笑ってくれたら」



そう言って彼は右手で私の左手を握って

「どこに行きますか?」

私に優しく問いかけた


思いがけないその言葉に嬉しくておもわず顔が赤くなる

それをなんとなく悟られたくなくて


「…トレイがそんなこと言ってくれるなんてびっくり」

と口にしたら

「…名前にしか言いませんよ」


と言われてますます赤面する

私は勢いよく立ち上がり黙って彼の手を引き出口へと歩き出す


「……わかって言ってるでしょ」

その途中でポツリと漏らした一言は

「えぇ、もちろん」
ばっちり彼に拾われて笑顔で返された





I with You





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