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□花火の音に紛れて消えた
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結局ジタンには先に登ってもらって、私は後から一人でなんとか梯子を登りきった
するとそこには。


「うわぁ…すごい景色…」
思わず見とれてしてしまうような絶景

そこからはアレクサンドリアの街が一望できた


「だろ??ビビが見つけたんだ」
まるで自分の事のように自慢する彼

そんなジタンの横顔はいつもより少しだけ寂しそうだった
かける言葉を探していたら、その表情は消えてしまったのだけれど



「お、花火始まった」
ヒュルルルル…、ドン。

鐘の下に座った彼と立ち尽くす私の横顔を花火の光が照らした
隣に座って花火に見とれるジタンを見つめる



どれほどの苦悩が、困難が
あの旅で彼らを襲ったのかは私にはわからない

だけど、隣で一緒に笑うことはできるよ


だから
私は君の隣にいつまでもいよう。



「ん、どうかしたのかい??」

視線を感じたジタンがこっちを向いた


「ううん…ジタン、好きだよ」
精一杯の優しさをこめて、つぶやく

そんな私に少し驚いて、だけどすぐに優しく微笑んで


直後、私の視界一杯にジタンが広がった。
そして、私の口元で鳴ったリップ音



「…名前、愛してる」
囁かれた愛の言葉。

それは花火の爆発音にかき消されて。



下にはあんなにたくさん人がいるのに、誰一人として聞こえていないんだろう

真夏の夜空に響く。





花火の音に紛れて消えた



(君の笑顔は消さないように)





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