短編
□本当の本当
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「あ…メールだ、ごめん一君!!ちょっといってくるね」
「ああ…」
一君はなんにも疑っていないような顔でおくり出してくれた。
僕がどこに行くかも知らないで…。
だまされるほうが悪い。僕は悪くないんだ。自分が本当の本当に恋人だと思ってるほうが悪い。そういう自惚ればっかり。
人間ってそんなもん…。
え?じゃあ僕の恋人が誰かって?
「ただいま…土方さん」
ここは近くにある土方さんの家。
僕は土方さんが一番好き。
「愛人はいいのか?」
「土方さん以外はみんなおもちゃだよ」
突然土方さんのケータイが鳴りだす。
メールがきたみたい。
「あれ?どこいくの?」
「少し用があってな」
「いってらっしゃい」
自分が一番愛されていると思うから疑いもせずに送りだした。
「土方さん、僕が一番って本当?」
「本当に本当…だ」
「ああ…うん…今から行く」
恋人に呼ばれたので行く。久しぶりだな…あいつと会うの…楽しみだ。
なにか菓子でも買っていくか…。
別に愛人のことなんてどうでもいい。本命はあいつ。
通話が終わったケータイの画面に表示されているのはあいつの名前…。
名前が知りたいか?
俺の恋人の名前は…斎藤。
俺も総司のことを言えない。でも、人間というものはそういうものなのだろう。
自惚ればかり…。
。
end