愛君番外

□凍てつくアルデバラン
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優姫side


無機質な電子音が、段々と大きくなる。私は、重い瞼を押し上げて、窓から入る日の光に顔をしかめた。目覚まし時計に手を伸ばして音を止め、伸ばした腕をベッドから力なくたらした。眠い。

朝、眠いのはいつものこと。でもそれなりに規則正しい生活のお陰で、朝は決まった時間に起きられている。

「さむ……」

休暇中、ほとんどの時間を居住区で過ごすから、さっさと着替えて向かえば温かいご飯が待っている。分かってるけど眠いし寒い。

いやでもご飯。ご飯が待ってる。

「んー……」

ベッドで体を起こして、大きなあくびをしつつ伸びをする。ふう、と息を吐いて脱力。まず顔を洗って目覚まししようと、ベッドから足を下ろした。

「あ……」

まただ。

何気なく、スリッパに足を入れる前に、床に足をつける。冷たいけど暖かい。冬のフローリングは冷たいけど、他の場所に比べて明らかに暖かいのだ。

もう何度目だろう。気付いたのはほんの最近で、初めは気のせいだと思ったけど、こう何日も続けば疑問にも思う。

「なんだろ……」

暖かい部分を足裏で撫でるように動かす。暖かいとは言っても冷たいので、足が冷えてくるのを感じてスリッパを履いた。

身支度をしながら、私はふと思い出した。

何年か前、私が熱を出した時も同じようなことがあった。あの時は、何も言ってこないけど心配してくれた零が、部屋の外で座ってた。私が部屋からでると、零はどこかに行ってしまったけど、零が座ってた場所だけが暖かかった。

また、誰かが私を心配してくれてるのかな。

床に残った暖かさを、気味が悪いと思うことはなかった。


fin

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