作品処 貴子

□月陰の恋
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一.
 今日は、私の十五歳の誕生日。
 月がだいぶ傾いてきたから、おもうさんの用意した祝いの宴も、あらかた終わった頃だ
ろう。どうせ、「主役」の私がいなくても宴は進む(大体、庭や広間からじゃ御簾の中身が
誰かなんて分らない)。少し気分が悪くなったから…と女房たちに嘘をついて、さっさ
と自室に引き上げてきた。人払いも命じておいたから、月の光が入りきらないこの部屋に
今いるのは、私一人だ。
 なんだって自分の誕生日に、わざわざ一人になったのか。だって、きっと、来るから。
もうすぐ、話をしに。お酒には弱いから、断りきれなかった分だけ顔を赤くしながらも、
作ってあげた機会に気が付かないような通鷹じゃないから。きっと来る。

 そうしたら、私は……。
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