霞に響く音

□開幕
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目の前が真っ赤に染まった


村中のあちこちからあがる火柱


いつも美しい音色を奏でていた村人たちの悲鳴!!



「い、いやっ!!お父さん!!お母さん!!」



そして目の前に倒れている両親はさっきから身動きひとつとらない


血の海が広がる


同時に逃げまどう町人たちはよく分からない奴らにどんどん襲われていって



「ーーーーーーひっ」



奴らに喰われた


この光景が夢であってほしい…けどっ


目の前の光景は嫌なほど現実的すぎて


血の匂いはよりいっそう現実味を私に起こさせて…


いや…だ、いやだいやだいやああああぁぁぁ!


「みんなを殺さないでっ!!」


「私から大切な人たちを奪わないでっ!!」


「ーお願いだからっ!!」


嗚咽まじりに叫ぶが…


その叫びも虚しく空気にとけて消えて


奴らに届くわけもなく…


なすすべなく友達が喰われていく


なかの良かった近所のおばさんがバキバキと嫌な音を立てて喰われていく


まさに地獄絵図といってもさしつかえのない最悪の光景


「なんでっこんなことに…っ!!」



ーみんなあいつらのせいだ


突然この美しい音色の響く町にやってきて


訳も分からないうちに次々に人々を襲っていって


それで


あっというまにかこんな状況になってしまった…



この状況に絶望し、希望を見出だすことも出来ぬままうずくまっていると自分の名前を呼ぶ声がした気がした



「…霞、音ーカノンっ!!」



「っ!!奏陽っ!?お母さんとお父さんがっ!」



「おじさんとおばさんはもう…っ」



「でもっ!!」


「ー逃げるしかないんだよっ!」


「死んだらおしまいなんだぞ!!」



「俺は絶対にこの地獄から生き残って奴らに…俺の大切な人を奪ったやつらに復讐するっ!
だからいまは逃げようっカノン!!」


「っ!」



溢れる涙を両親の血で汚れてしまった腕で擦って立ち上がる


「お父さんお母さんわたしは絶対、いつか必ず仇をとるから…!」


そう大声で誓って奏陽と一緒に森の方へ逃げた



「森まで行けば俺の隠れ家があるからそこに逃げよう!!」


「…うん!!」




森に入ろうとした時、




ぞわりと背中に悪寒が走った



「!?」



それと同時に奏陽が…吹き飛ばされた



その体は樹齢300年もありそうな大木に打ち付けられてそのまま地面にたおれこんだ



「い、いやああああぁぁぁ!」




すぐに駆け寄る



「奏陽!!奏陽!!」



「カ、カノン…っ…あ…はっ…!」




奏陽が口から大量の血を吐いた




「わ、わりぃ…何か…さっきので…っ内蔵やられたみたいだ…」




「奏陽!!いやっ死んじゃダメっ!!」




「カノン…はやく逃げろっ…さっきの奴が戻って来る前に…お前だけは絶対に生き残れ…っ!」




そしてわたしの胸ぐらを掴んで顔を近づけると耳元で最後の言葉を言い残して…私に微笑みかけると力を使い果たしたように













ずっしりとわたしに奏陽の重さがかかった












「そ、奏陽?ねぇ、返事して?っ!お願いだからっ!」




どんどん冷たくなって行く体…




それと比例するようにわたしのなかでなにかがあふれでてきた





「あ、あ、ああああぁぁぁ!」





意識を手放す寸前みた光景は奏陽を襲ったらしい怪物が弾け飛ぶ姿とあんなに真っ暗だった目の前が真っ白に染まった光景だった




































この次の日、この村を訪れた当時の輪の隊員たちがみたのは焼け野はらのようになった街と、すでに生命活動を止めた街人の残骸、大量の能力たいと能力者の死骸、そして近くの森の入口で少年の死体を抱きしめたまま座り込んだ少女を発見した







そして、





この時の事件は後に火不火の仕業だと判明し、音の消えた夜といわれるようになった










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