孤独の果て
□五章
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『・・・いい加減あきらめないんですか』
部屋のドアに向かって言う。
別にこのドアに言ったんじゃない。
ドアを挟んで向こう側にいる人物に言ったのだ。
先日のできごと以降、彼ら(主にデイダラと飛段)に火が付いたのか、黒麗をここに馴染ませようとこの1週間程アクションを起こしている。
今だってきっとこのドアを開ければ両腕を捕らえられとんだお遊びに付き合わされるのだろう。
黒麗もすでに暁へ来て時間が経つので馴染んでいないわけでもない。
しかし元々感情など表に出さない人柄故にそう思われがちなのは仕方がないだろう。
「やっべえバレた!どーするデイダラちゃん」
「ばっか声でけぇぞ、うん。こういうときはあえて黙ってんだよ、うん」
『じゃあ私がそのドアから律儀に出てくるまでどうぞ待っててください』
「おー」
瞬身を使って部屋から出た黒麗に2人が気づくのはきっと彼女がこの場から去ったあと。
そんな2人に思わず口が緩んでしまう。
「お前も一応人間らしい面するんじゃねーか」
『・・・・・・』
とんでもない皮肉が飛んできたと見てみると、壁によしかかってる見知らぬ赤毛。
まさが外部の人間が入り込むはずがない。
その前にこの赤毛は暁の象徴でもある外套を身につけている。
そこで黒麗は思い出した。以前デイダラから聞いたことを。
蠍の旦那、実はあの姿は傀儡で本体は中に入ってんだ。うん。
『蠍さんですか。私は人間の要素のほうが少ないので・・・人間に近づけたと解釈して褒め言葉と受け取ります』
「ほぅ、知ってたか。まあデイダラ辺りが喋ったんだろーが。それよりその話聞かせろよ」