全校 short

□風と声
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「あっちーっ!!」

桃先輩が叫ぶ。

「うるさいッスよ。桃先輩。」
「つってもよ〜、暑いもんは暑いんだよ〜…」

口に出すから余計暑く感じるんスよ。

危うくくちから出そうになった言葉を飲み込む。

シャーッ と自転車のタイヤの音が響く。

「風が、気持ちー……」

身体全体で風を感じる。

「なんか言ったかー?越前!!」
「なんでもないッスよー!」

何だよ越前、はっきりしねぇな…。と言った桃先輩の顎から汗が一滴落ちた。

「だぁぁぁっ!!あっちー!!」
「だからうるさいってば。」
「越前!!俺にしっかり掴まってろよ!?」
「は?」

ぐんっ とスピードが上がる。
振り落とされそうになったが、桃先輩の腰に腕を回してしがみついた。

「好きッスよ…」

呟いた言葉は、風に消された。
その声は誰にも届かない。


・・・・・・fin・・・・・・・

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