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□思いのほか
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最近、あの鍛錬バカを見ると胸の奥から、変な痛みがする。

それが何なのか分からず時間は過ぎていく。



「集中力が欠けている!6年生ともあろう貴様が…鍛錬が足りん!!」

今日は何度も聞く、文次郎のその言葉。

「うるさい。鍛錬バカが!!」

今日は6年生で2人1組で行う授業だった。

いつもは同室同士で伊作とだが、文次郎と組みあきた仙蔵の思い付きでジャイケンで決めることにした。


俺は長年伊作と一緒で、伊作の不運が少し移ったらしい。

一番なりたくない文次郎と組む事になってしまった。

今は、今日は、喧嘩などしたくなかったからだ。


だけど最初から喧嘩になりそうな雰囲気だった。


集中して無いことなど俺の方がわかってる。

だけど集中できない。

なぜだかわからない、こんな事は初めてでコイツと話すたび、変な痛みは起こる。

「さっさと終わらせるぞ!」

この痛みが嫌で早く終わらせたい。

「何をそんに急ぐ?」

何も知らない文次郎は聞いてくる。

「お前と一緒じゃやりにくいからだ、」

この際はっきり言ってしまおう、

文次郎もそう思っていると思うし、

別に困りはしないだろう。

「…そうか、わかった。」

あれ…?

少し寂しそうにみえた。


てっきり同意すると思ってた。

だからこそ意外な反応だった。


それからは、授業に関わる話以外しないまま、喧嘩することもなく無事終わった。

良かったような、少し罪悪感が残るような日になった。

その日以来俺は文次郎と会ってない。

というか、避けられているような感じだった。

俺はその間モヤモヤしていた。

「留さん、文次郎と何かあった?」

「最近、お前らが喧嘩するところ見てないからな…その上、文次郎はお前のことを避けてるみたいだからな、」

食事中、伊作と仙蔵が話しかけてきた。

喧嘩しないことは良い事じゃないかと思うが、、、


それほど俺達は伊作とあの仙蔵までもが心配するぐらいに変らしい。

「別に、大したことない。」

「うそ、留さんずっと顔が寂しそう、」

そこまでなのか?

俺は自分自身もわからなくなってきた。

「……一回話し合ってこい。文次郎も暗すぎて気持ち悪い。」

いやという返事を言わさない威圧感を放っちながら言ってくる。はっきり言って怖い、

「……はい。」

とうとう良いという返事をしてしまった。

久々に会うから緊張感から泣き出しそうだった、

「文次…郎、い…るか?」

少しカタコトになりながら、呼んでみた。

返事がなかった。

仙蔵からは、部屋に入っても良いという了承は得ていたから入ってみた。

文次郎は寝ていた。

いつもは、寝ていても何かしてくるが、よほど疲れていたんだろう。

いつもは見ない姿だから、好奇心がわいた。

じっくり見ていたら、目の下の隈が気になった。

起きない事を願い、そっと触ってみた。思いの外起きなかったから安心した。

「文次郎……疲れてるんだな、、ゆっくり休んでいて、、、」

俺は起きたら用具室に来てくれと、置き手紙を書いて長屋をでた。

そしたら案外早くきた。

「何のようだ、」

不機嫌そうに言った。が来たことは良かったから、その事には触れずに聞いた。

「お前、最近なぜ俺を避ける?」

「!…お前は俺と居たく無いんだろう…?」

コイツあの言葉を気にしてるのか?

「でも、避ける事は無いだろう?」

「!!お前にはわからないだろう!!俺の気持ちなんか!」

「あぁ!!知らないな!!お前が言わないからな!!」

急に怒鳴るから俺もムキになって言った、

「っ!良いだろ、言ってやるよ!!」

「ぇ?」

言うなんて思ってもなかったから素でおどろいた。

「俺はお前が好きなんだよ!!これで文句あるか!!」

耳まで赤くして言ってきた。

最初は何を言ってるのかわからなかった。

理解できたのはその数秒後、

だんだん俺の顔も赤くなるのがわかる。

この時初めて気付く、あの時の痛みが文次郎に恋していたからだと。

「ふんっ///もう行くからな!!」

「まて!返事聞きたくないか?」

「聞きたくない!」

即答!?軽く傷つく、、

「……良い返事だとしても?」

「はぁ?」

「俺もお前の事好きだぜ?」

「はぁぁぁぁ///!!?」

本気で驚いているようだ。

「冗談はやめろ!」

「冗談なんかじゃない。本気だ、」

「…本気なのか?」

コクンと一頷き。

そしたら抱きついてきて、

俺の首筋に顔を埋める。

「夢じゃないよな…!!夢なら覚めるな!!」

「あぁ、夢じゃないぜ///」

抱き付かれてる事は恥ずかしいけど

嬉しいこの気持ち。

初めての恋がコイツで良かった。

心からそう思った。

Fin
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