終わらない夢を紡ぐキミに
□番外編◆不可侵の女神- sacred goddess- by 中西京介
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「も、もう…すぐそうやってからかう……」
―――ほら、また本気には受け取ってくれない。
とりあえず、『タナボタ』的な幸運を狙ってせまってみたが、そのとき部屋のドアが開いて―――彼女は一磨の部屋に引き戻されてしまった。
「ちぇっ、もう少しだったのになー」
精一杯の虚勢。
その言葉をドアの向こうで、彼女は、一磨は、どう聞いていたのだろう。
ただ、いまは彼女をかっさらうことなんて出来そうになかったのは確かだった。
その後、仕方なく、自分の部屋に入る。
シャワーを浴びて、翌日のスケジュールを確認後、ベッドへと傾れ込むように横になった。
だけど……声量豊かな彼女が絶頂に達するときに上げると思われる声が聞こえてきて……それは簡単にオレの心を掻き乱す。
オレの寝室と一磨の寝室は隣り合わせで、壁1枚を隔てているだけだったのだ。
ただ、いつもは、彼女が上げるその声が一度聞こえるだけ。
それさえ我慢すれば、あとは平気だった。
それが今日に限って、オレの神経が過敏になっているせいなのか、二人の問題解決の手段としての行為が激しすぎるせいなのか、彼女の上げる声が、幽かだが、ずっと聞こえてくる。
この壁一枚を隔てた隣で一磨に抱かれている彼女を想像してしまい、こぶしを握り締めた。
その様子を想像して自慰行為に走るほどバカじゃないし、それよりも、悔しさと嫉妬でどうにかなりそうだった。
部屋に居たくなくて、外へ遊びに行こうとも考えたがとてもそんな気分になれず……耐え切れずに、亮太に部屋に行っていいか電話をする。
『んー、しょうがないなぁ。 いーよ、来いよ』
「悪い…」
オレの海尋への想いや部屋の事情をを知っている亮太は、渋々といった体で了解してくれた。
そして、オレは亮太の部屋でまんじりともしないで一晩を明かした―――。