Hazardous Material

□The Beginning of the Tragedy / Agony of Hopeless Grief
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Agony of
Hopeless Grief


-断たれた未来-





―――幸せそうに微笑む海尋。

―――楽しそうに笑う海尋。

―――少し顔を赤らめてはにかむ海尋。

―――腕の中で濡れた声を上げる海尋。

そして、今日、明るい日差しの中を歩いていく海尋の後ろ姿―――。

悪夢から解放されたと思ったあの日から今日の昼にかけての、一緒に過ごした彼女の様子が次から次へと浮かんでくる。

でも、最後に浮かんだのは―――あの日、狂気をはらんだ瞳でオレを見た彼女。

その瞬間、車は急停車する。

そこは企業の倒産により建築途中で放置された、病院となる予定だった建物だった。



「ここかっ」



オレは車を飛び出し、声が聞こえる上階を目指して駆け上がる。

階を上がる毎に近づいてくる彼女の泣き叫ぶ声―――その声はもう、擦れてしまって、途切れ途切れで―――。

最悪の事態を確証して、心臓が嫌な音を立てた。



「海尋!! どこ?!」



最上階に辿りつき、不自然に明かりのついた部屋を目指して暗い廊下を走る。

その先に―――目を覆いたくなる、残酷な現実が待っていた。







―――床に散乱する引き裂かれた彼女の服の切れ端。

―――そして、薄汚いベッドの上で蠢く男と何人もの男に押さえつけられている彼女の白い肢体。







心臓が壊れるかと思うほどの鼓動は全身を打ちつける。

その光景は体を震わせ、立っている力をも奪おうとする。

オレの後から続いてきたメンバーもその現状に言葉を失っていた。



「その子を離せ!」



あまりものショックで何も言えないオレに代わって一磨が激昂して叫ぶ。

彼女に圧し掛かっていたいた男は動きを止めてこちらを振り返った。

オレたちの姿を見たその男は慌てて覆いかぶさっていた彼女の身体の上から退いた。

―――そのあと、オレはベッドの近くで暴行中の様子を撮影していた男があの二人組の片割れだと気付く。

ヤツはオレを見るとニヤリと下品な笑みを浮かべた。




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