終わらない夢を紡ぐキミに
□記憶・ゆめがたり with 中西京介/本多一磨
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終わらない夢を紡ぐキミに
〜記憶・ゆめがたり〜
with 中西京介/本多一磨
―――午後6時。
京介くんがこの家を出る時間になってしまった。
彼が搭乗するのは午後9時発羽田行き最終便。
見送りにいきたくても、ここに一人で戻ってくる手段がないし、何よりも、waveのみんなと一緒に東京に戻るのだろうから私はいないほうがいい。
もっとも、今までも空港に見送りに行ったことはないのだけど。
「海尋」
京介くんが私の名前を呼び、それからギュッと抱きしめて私の頭を撫でる。
頭を撫でられる感触が心地よくて、彼の背中に手をまわして瞳を閉じ、その心地よさに身を委ねる。
―――やがて、頭を撫でていた手が私の頬に添えられ、上を向かされると同時に優しいキスが落ちてきた。
そのとき、迎えに来たという合図のクラクションが鳴る。
指定した時間通りにタクシーが到着したのだ。
唇と唇を重ねただけの優しいキスのあと、京介くんは名残惜しそうに言った。
「……じゃ、いってくるね」
「うん……いってらっしゃい」
玄関を出る直前まで彼は何度も私の方を振り返り、そんな彼に私は微笑みを絶やさずに手を振り続けた。
玄関の扉が閉まり、彼の乗った車のエンジン音が遠ざかるのを聞いて、私はようやく一筋の涙をこぼす。
仕方のないコトだとわかっていても、涙を止めることが出来なくて。
それからいつもしているように、気分を紛らわせるために、涙を拭ってテラスのベンチに座り、海を眺める。
しばらくして、そっと目を閉じた。
聞こえてくるのは家の周りの木々が鳴らす葉の音と、家の前の海が奏でる波の音。
自然の音に身を委ねていると意識が遠くなっていく。
その中で見たのは―――近い記憶と遠い記憶が混じった夢。
近い記憶とは、私が京介くんを受け入れてからの時間。
遠い記憶とは、一磨と過ごした時間。
私にとって、どちらも大切な時間だった―――。
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