終わらない夢を紡ぐキミに
□記憶・Turning Point Day with 本多一磨
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終わらない夢を紡ぐキミに
〜記憶・Turning Point Day〜
with 本多一磨
あの、忌わしい事故から1年――――。
身体のほうは完全にほぼ元通りに回復していた。
………子どもを失い、次の命を紡ぐことが出来なくなったコトを除いて。
ここ2、3ヶ月の間に私の復帰を願うファンからの手紙やメールが急激に増えたのを受けて、久しぶりにカメラの前に立つことになった。
その仕事とは事故以前によく呼ばれていた歌番組の出演で、今回は一磨たちWaveと一緒だ。
精神的にはまだ不安定な部分があったために、万が一のことを考えて、夫である一磨と一緒に出演できるよう、チーフ・マネージャーの山田さんが調整してくれたようだ。
その仕事をこなすべく、私は一磨とともに収録がある局に来た。
「じゃ、またあとでね」
私の控え室にしばらく滞在していた一磨は、Waveの収録前ミーティングが始まる時間になると、1つ離れたメンバーのいる控室に向かった。
今日は私の復帰をファンに知らせるという主旨のため、以前のヒットナンバーを歌うことになっている。
それに合わせた衣装が用意されていて、着替えた後、ヘアメイク・アーティストのモモちゃんこと桃瀬達也さんの到着を待つ。
今日の私のヘアメイク担当を、リラックスできるようにとモモちゃんを手配してくれたのも山田さんだった。
(モモちゃんに会うのも久しぶり…。 お見舞いに来てくれた時以来だから…1年ぶりかな……)
何から話そうかと考えているときだった。
突然、廊下に響き渡るような大きな声。
「冗談じゃないっ!そんな依頼、受けられるか!!」
それは、一磨の声だった。