終わらない夢を紡ぐキミに
□キミが一番望むコト -a song- by 中西京介
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終わらない夢を紡ぐキミに
〜キミが一番望むコト-a song-〜
by 中西京介
夕方の散策を終えて、今日はいつもよりも体調がいいという海尋と一緒に外食に出かけることにした。
やはり体調がいいときは彼女も口数も多くなりがちだ。
オレも嬉しくて、しかも、あの歌について杞憂していたコトがスッキリしたせいか、心が浮足立っている。
……あの事柄は、意外にもオレの心に圧し掛かっていたようだ。
食事を終えて一息ついていたころ、突然、レストランの隣の建物から大騒ぎする声が聞こえてきた。
そこではガーデン・パーティーが行われているようで、大騒ぎの声の主は数十人のドレスアップした人たちだった。
「……結婚式の2次会かな?」
そう言ったのは、1組のカップルがより一層とドレスアップしていて、他の参加者に囲まれて幸せそうに笑っているのが見えたからだ。
「みたい……ね」
海尋の寂しげな声音に彼女のほうに向き直ると、思ったとおり、寂しげな表情を浮かべていた。
そして、顔を伏せる。
彼女のそんな様子を見てオレも過去のことを思い出す。
海尋と一磨の披露宴の後に行った、親しい者たちだけでのガーデン・パーティーのことを。
あのとき幸せの絶頂にいた彼女は誰にも負けないくらいの眩いばかりの笑顔をしていたんだ―――。
「海尋、帰ろっか」
「……ん…」
席を立ち、うつむきながら歩く彼女の肩を抱き寄せて出口に向かう。
支払いを済ませてレストランの玄関を少し出たとき、赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。
と、同時にそれをあやす女性の声。
だけど、声音が焦っているように聞こえる。