終わらない夢を紡ぐキミに
□背徳のウェディング・ドレス with 中西京介
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背徳のウェディング・ドレス
with 中西京介
ふと意識が上昇し、風と波の音が耳に届く。
その音に混ざって時折り聞こえてくる、本のページをめくる音。
このまま眠っていたいと思いながらも重い瞼をようやく開けて音のする方に頭を動かすと、ベッドの脇に置いたロッキングチェアに座って京介くんが本を読んでいるのが目に入った。
―――沖縄に戻って1ヶ月が経とうとしていた。
あのレコーディング以来、伊豆にいたときは体調はずっとイマイチで起きることさえ億劫になっていたけれど、ここに戻ってからはほんの少しだけマシになっている感じがする。
私が起きたことに気づいた彼は優しく微笑み、
「海尋。 ……ただいま」
と本を閉じて私のそばに来た。そして、
「……悪い夢でも見たの?」
と心配そうな顔で私の目尻を指でなぞって涙をぬぐう。
京介くんのその仕草が何を意味しているのか分からず戸惑っていると、
「少しうなされてたし…涙……」
と、今度は困ったような複雑な表情で彼が微笑んだ。
「え…? 私……」
重い体をようやく引き起こすと、涙がもう片方の頬を伝った。
夢は……確かに見てた。
数年前、一磨と暮らしていた時の…夢。
一磨と暮らしていて一番幸せだったころの………。
……でも、幸せな夢なのにどうして涙が…?
戸惑っていると、私の髪を梳きながら京介くんが尋ねる。
「今日は行きたいところがあるんだけど……体調は?」
「う…ん……よく眠ったから大丈夫」
「そ? じゃあ少し何かを食べてから出かけよ? もう少し寝てて」
京介くんはそう言って私を横たわらせてからキッチンに向かい、朝食の準備を始めた。
いつもよりほんの少しだけ強引なお出かけに首を傾げながらも、私は瞼を閉じてキッチンの音を聞きながら少しだけうとうととする。