終わらない夢を紡ぐキミに
□眉月に誓う、キミとの愛
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眉月に誓う、キミとの愛
by 中西京介
全国ツアーを終えた数日後、オレと一磨は二人で沖縄に向かった。
本来なら海尋の命日に訪れるはずだったが、ちょうどファンクラブ限定ライブと重なってしまったため、それよりも2ヶ月遅れの墓参となってしまった。
空港近くに借りてあった駐車場は解約していたので、タクシーで海尋と暮らしていた家に向かった。
玄関のドアを開けた瞬間、目に飛び込んでくるのは……オレが撮った彼女の最後の写真のパネル。
ドームライブでアンコールのあとに歌ったときに映し出されたものだ。
儚げだが穏やかな笑顔。オレはここに帰ってくるたびにその写真に笑顔を向け、
「ただいま、……海尋」
と声をかける。
それ以外にもこの家の壁の至るところに彼女の写真やスチルを大小のパネルにして飾ってあった。
もっとも大きなのは芸能界で一番輝いていたときの彼女のスチルパネルで、眩しいほどの笑顔を向ける海尋のステージ姿だ。
他にも、オレが持っている全ての写真をパネルにしてある。
そして天窓から差し込む光の先には―――ふたりのウェディング・フォト。
教会の天窓のステンドグラスから降り注ぐ光の中、オレが知っている中で最高の笑顔で写っている海尋がいた。
それを見た一磨は苦笑しながら言った。
「おまえ……ひとの嫁さんと撮った結婚式の写真、飾るなよ」
その声音はからかうようなものであり、決して責めている感じではないからオレも軽く返す。
「いいじゃん、こんなに最高の笑顔なんだから……さ」
彼女がこの世を去ってから沖縄に来てもこの家に帰ってくることが出来なかった。
この家には海尋との思い出が詰まりすぎていたからだ。
半年経ってからようやく踏み入れることが出来るようになり、それ以来、以前と同じく時間を見つけてはこの家に帰ってくるようになった。
ここは既にオレにとって、癒しの空間となっている。
不思議な話ではあるが、この家のどこに居ても、海尋が見守ってくれている気配を感じていられるのだ。
ふと、翔にこの話をしたときに顔が蒼ざめていったことを思い出した。