終わらない夢を紡ぐキミに
□番外編◆次の世界でもまたあなたと…
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番外編・次の世界でもまたあなたと…
by heroine
明け方、夢を見た―――。
濃紺の夜空には望の月が浮かび、満開の桜の木の下で私は誰かを待っている。
桜はほんの少しだけ花びらを落とし、蒼い月影は宙を舞う桜色の花びらを照らしている。
誰かを待つ私は腕の中に大切な愛しいものを抱えている。
―――美音。私たちの愛しき嬰児(みどりご)。
美音は安心しきって、天使のような笑顔を浮かべて眠っている。
ふと、美音が何かに気付いたように目を覚まして、声を出して笑った。
顔を上げると、誰かがこちらに向かって歩いて来ていた…私が待っていた人たちが。
「……一磨…、……京介くん…」
二人は優しく笑みを浮かべて、私たちを守るようにそっと抱き締める。
腕の中の美音が一磨に向かって両手を上げる。
彼は穏やかな微笑みで美音を抱き上げた。
それを見る、私と京介くん。
ひとしきり一磨にあやしてもらった美音は、今度は京介くんのほうに手を伸ばす。
少し照れくさそうな笑顔で、京介くんは美音を抱く。
今度は私と一磨がその光景を見ている。
そして、美音は同じようにひとしきり遊んでもらったあと、私のほうにその小さな手を伸ばす。
私が京介くんから美音を受け取ると、彼らは片手を上げて来た道を戻っていく。
「またね」
私と美音はそう言って彼らを見送る。
二人が見えなくなるまで―――。