Hazardous Material

□Prologe / Dirty Idol
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Hazardous Material -危険要素- by 三池亮太


Prologe -プロローグ-






―――オレは無力だ。

好きな女ひとりさえ守れない。

彼女が心から助けを求めているのに助けることさえできない。

彼女の心の悲鳴が聞こえているのに聞こえないフリをしなくちゃいけない。



「お、今日もナイトが待ってたぜ」

「キミもけなげだねー」



彼女の控え室から出てきたヤツらは、廊下の壁に背を預けて立っていたオレのことをそう嘲笑しながら去っていく。

その後ろ姿を見て湧きあがる殺意。

だけどどうするコトも出来なくて、オレは唇を噛み締め、拳を握り締める。

彼女の控え室に入ってドアキーを閉め、奥の小部屋に入る。

目の当たりにするのは―――床に散乱した彼女のステージ衣装と……下着。

そして、シーツのような布にくるまって震えながらうずくまっている彼女。



「……海尋ちゃん…」



小さく名前を呼ぶと身体をビクッとさせ、少ししてからおそるおそる顔を上げる。



「亮太……くん……」



聞き取れないほどの小さな声でオレの名前を呼ぶ彼女を、くるまってる布ごと抱きしめる。

彼女はオレの腕の中でようやく声をあげて泣く。

それも、外には聞こえないような小さな声で。



―――ごめん、今日も守れなかった…。



その言葉を飲み込む。

そのかわりにギュッと抱きしめる。

折れそうなほどに細く、その華奢な体を。





もっと力をつけたい。

もっと強くなりたい。

もっと彼女を守れるようになりたい。

もっと……もっと―――。



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