Hazardous Material
□Hazardous Material / Fletfulness
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Fletfulness -焦燥-
まだずっと先のコトだが、次の番組改編でN局でのオレたちの仕事が激減してしまうことを聞かされる。
仕事自体がなくなったかというとそうではなく、N局での仕事が空いた分、他の局での仕事が増えていた。
そんなことを考慮するとあの連中が関与しているのは間違いないだろうと社長は漏らす。
「ここまでやられるとは…。
こちらも出方を考えざるをえないな」
ただ、あの日以降、彼女からの『呼び出し』の連絡が入らなくなっていた。
オレに気を使ってかと思ったが、実際にマネージャーの誰かが必ず同行していることを知った。
海尋ちゃんの所属事務所があのコトに気づいて対処してくれたのだと思い込み、胸をなでおろした。
しばらくは何事もない日が続き、この問題はこのまま終息するのだろうと思っていた。
だけど、そうではなく―――番組改編の時期を少し過ぎたある日、海尋ちゃんからの連絡が入った。
一人でN局に行くことになった、と。
でもその時間にはオレたちの冠番組が別の局で入っている。
何とか理由をつけて抜けようとするも、社長に釘を刺されて以来、オレたちの監視も強くなっていて出来なかった。
時間だけが過ぎていく。
焦りだけが募っていく。
こんなことをしている間にも彼女はヤツらの餌食になっているのかもしれない―――。
そう思うとはらわたが煮えくりかえりそうなほどの怒りが込み上げてくる。
それでも、アイドルスマイルを振りまき続けなければならないコトが辛い。
ようやく番組を終えると、一磨に事情を話してオレは急いでN局へと向かった。
辿りついたオレは一目散に彼女にあてがわれている控え室へと走る。
既に控え室のネームプレートが外されていたが、彼女がいないかとにかく確かめようとドアノブを回した。
だが、鍵がかかっていた。
「…っ!!
海尋ちゃんっ、オレだよ!
ここを開けて!」
ドアを叩いて控えめに呼びかけるも、一向にドアは開けられない。
誰かがいるのは確かなのに。
何度か呼びかけてもドアが開く気配はなく、しばらくしてオレはドア横の壁に背を預けて立っていた。
そして、永遠に続くかと思うほどの時間が流れた後、鍵が解錠する音がして、そのドアが開く。
出てきたのはあの二人組だった。
ヤツらはオレを見ると薄ら笑いを浮かべて去っていった。
そんな奴らの後ろ姿を見て、オレはこぶしを握り締めながらその背中を睨むことしか出来なかった。
重い足取りで部屋に入ると―――この前と同じように床にうずくまって震えている彼女がいた―――。