Hazardous Material
□Turning Point
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翼を傷つけられながらも羽ばたこうとしている彼女を何とかして救いたい―――。
だけどそんな思いとは裏腹に、海尋ちゃんへの暴行行為は続けられていた。
所属事務所側に事情を話すよう何度も説得を試みたが彼女は首を横に振るだけだった。
それどころか、絶対に誰にも言うなと口止めされた。
『事務所を潰す』
『Waveを排除してやる』
ヤツらに言われたその二つの言葉が彼女の逃走行動を制限してしまっているのだ。
自分の身を犠牲にしてまで守ろうとする彼女の意思は絶対に讃えられるべきものじゃないが、尊重するしかなかった。
守りたい彼女を守れない現実はオレを苦しめる。
―――彼女のコトなんて放っておけば楽になれるのに。
何度もそんな考えが浮かんでは消えていく、そんな日が続いていた。
―――が。
ある日突然、そのニュースは全国を駆け巡った。
―――芸能界薬物汚染問題―――。
芸能人が出入りしていると言われていたクラブでの違法ドラッグパーティーが摘発されたのだ。
あの二人組を含む、名の知れたタレント数名が摘発されたその場にいたらしい。
果てには定期的に行われていたそのパーティーにヤツらが頻繁に参加していたという証拠写真が週刊誌やネットの投稿サイトに掲載された。
二人の顔が明確に写っていたため、始めは沈黙していた事務所も認めざるを得ない状況になり、ヤツらの芸能活動は全面停止し、本日付けで解雇することを公表した。
「まさか、京介があのパーティーの存在を知っていたとはねー」
「知り合いのコから聞いてたんだよ。
んで、証拠写真撮ってもらってたワケ」
「まさか、そのコ……」
「んー? 毎回違うコに入ってもらったし、絶対に飲まずに途中抜けしろって言っといたから大丈夫だろ」
「お前、何人の女のコに頼んだんだよ……」
「つか、よく潜入してくれたよなー。
もちろん、見返りありなんだろ?」
「ふっ。
そーゆー野暮なコトは聞くなよな」
驚いたことに―――写真の数枚は京介の知り合いが匿名で送っていたのだ。
もちろん、京介が写真に関与していることは口外無用だ。
外ではこんな話は絶対に出来ないから、仕事から帰って一磨の部屋に集まったときに事の顛末を聞いた。
「ってことで、亮太。
海尋ちゃんに会いに行けば?」
「え」
「しばらく会ってないんだろ?
行ってこいよ。
アイツらが芸能界から追放されたことを報告しに、さ」
みんなに背中を押されると同時に、オレは部屋を飛び出していた。
彼女の驚く顔と喜ぶ顔を想像しながら、彼女の元へと急いだ。