Hazardous Material
□From Darkness To Brightness / Pure White
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From Darkness
To Brightness
-闇は明けて-
あのニュースからしばらく経ち、海尋ちゃんは徐々に本来の笑顔を取り戻していった。
ふいに翳る表情をすることもなくなり、生き生きとしている。
ただ、さすがに恐怖心は残っているようで、あまり面識のない男性が複数でそばを通るだけで体を強張らせる。
そんなときは、彼女の名前を呼んで誰にもわからないようにそっと手を握る。
すると、戸惑いながらも安心したようにオレに微笑みを向ける。
少しずつでもいいから、その恐怖心もなくなればいい……今はただ、それを願っていた。
オレは相変わらず出来るだけ時間を作っては数分間だけでも彼女に会いに行くようにしていた。
同じ番組で一緒になったときは、彼女がいつも笑っていられるようにメンバーで傍にいるようにして楽しく過ごしていた。
そういう穏やかな日々が続き…今日はこのあと二人とも仕事がなかったため、オレは彼女を食事に誘おうと彼女の控え室に向かった。
―――ある思惑を持って。
「海尋ちゃーん、いるぅ?」
以前のように軽いノリで、彼女の控え室のドアをノックすると同時に開ける。
と。
「りょっ、亮太くんっっ! 返事してから開けてよっ!!」
ちょうど彼女は私服に着替えている最中で。
顔を赤らめて、手に持っていたブラウスで下着姿の体を隠す。
既に一度だけ体の関係を持ったとはいっても、それはそれで恥ずかしいようだ。
「りょ、亮太! おまっ……」
反省会が終了してすぐに抜け出したオレの後ろを同じように翔が付いてきていたのだが、翔は海尋ちゃんの下着姿に焦り、慌てて部屋の外に飛び出した。
あまり免疫のない翔の焦る姿が可笑しくて、オレは腹を抱えて笑う。
「えっ、翔くんもいたのっっ???
……亮太くん、ヒドイっ!」
着替えが済んだ彼女は、耳まで赤くしてオレに抗議する。
振り上げた彼女の両手を掴み、オレはその唇にちゅっとキスをする。
「……!」
海尋ちゃんは、顔をこれ以上ないくらいに赤くして口を噤んだ。
掴んでいた両手を離し、顔を覗き込むようにしてこのあとの食事に誘う。
「仕事、終わりだよね?
これからご飯食べに行かない?」
「え…え? ……みんなと一緒、に?」
「なんでみんなと一緒に行くのー。
二人だけで、に決まってんじゃん」
そう微笑みながら言ったあと、戸惑う表情の彼女にオレは真剣な表情に変えて続ける。
「……ちょっと話したいことがあるんだ」
「え……」
彼女の表情が戸惑いから不安げに変わる。
オレはパッと笑顔を彼女に向けて、
「さ、行こうよ。 ……みんなに邪魔されないうちに、ね」
と、帰り支度を促した。