Hazardous Material
□The Beginning of the Tragedy / Agony of Hopeless Grief
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The Beginning of
the Tragedy
-悲劇の始まり-
収録が終わると同時に、彼女からの連絡が入っていないか確認するためにオレはケータイの電源を入れた。
彼女の仕事のほうが少し早く終わる予定だったから、連絡が入っているだろうと期待していたのだが電話やメールの着信案内はない。
「海尋ちゃんからの連絡、まだかよ?」
翔がオレのケータイを覗き込みながら言った。
「んー、押してんのかなー」
そう言いながら画面を閉じ、帰り支度をして彼女からの連絡と迎えの車とを待つ。
しばらくしてオレたちの迎えの車のほうが先に到着し、乗り込むと同時にオレは彼女に電話をかける。
数回の呼び出し音の後、留守電に切り替わった。
仕事中なら電源を切っているはず―――そう思いながら何度かかけなおすが、彼女は出ない。
車がオレたちのマンションに着き、エントランスにかかる時計を見た義人が呟く。
「ちょっと遅くないか…?」
収録なら仕事が予定より押すことは多いが、今日の彼女の仕事は生放送だったからそれほど予定時間をオーバーするコトはない―――そう思った途端、嫌な考えが頭を過ぎる。
だけどあの二人組は解雇されて芸能活動を中止させられ、もう局では遭うことはなくなったはずで―――。
「……局、では…?」
そう呟いた瞬間、恐ろしい考えが頭を掠める。
そのとき手元のケータイがメール着信の音を鳴らす。
送信相手は海尋だが、ファイルが添付されていた。
メールのサイズからそのファイルが写真であることがわかる。
仕事が終わった事を知らせるメールになぜ写真が添付されているのかと不思議に思いながらもそのメールを開くと―――。
「!!! なんだよ、これ……っ!」
背筋が凍りつく―――そこに写っていたのは、数人の男に囲まれた海尋。
と同時に鳴った、電話着信音。
すぐに通話ボタンを押し、
「もしもし、海尋ちゃんっ? 何してんの? いまどこ??」
と向こうの声が聞こえる前に矢継ぎ早に聞く。
すると―――。
「……よ。 写メ、見てくれたぁ?」
聞き覚えのある声に血の気が引いた―――。