終わらない夢を紡ぐキミに
□動き出した運命-destiny- by 中西京介
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撮影に入る前々日まではそれぞれ単独の仕事が入っていて、各自別行動をすることになっている。
ある事情からいち早く沖縄入りすることにしていたオレは、撮影前日の早朝第1便に乗るべく、午前3時に仕事を終えたその足で空港へ向かった。
が。
空港ラウンジで搭乗時間になるまで雑誌を読んだりしてくつろごうとしていると、ぞろぞろとメンバーがやってくる。
「! お前ら……」
「あれ、京介も1便で行く予定だったんだ?」
「遅くまで仕事してた割にはずいぶんと早いな?」
仕事の連続でメンバーと会うことのなかったオレは聞いてなかったのだが、翔の提案で「どうせなら一番早い便で行けるヤツは先に沖縄入りして、少しでもオフを満喫しよう」ということになったらしい。
翔らしい考えだ。
それで偶然にも全員同じ便になったというわけか。
特定の人間しか入れない空港ラウンジは、時間が早いからかオレたち以外の人がいなくて、ついいつものようにとりとめのない雑談が始まる。
「撮影、やっぱ女のコ欲しいよねー」
「休日を楽しむwaveってコンセプトだからそれはないだろうな」
「いやいやいや、休日だからこそ女のコ欲しいでしょ!」
熱弁する亮太に少しだけ同意しながら苦笑する。
静かに過ごすはずだった時間は賑やかなまま過ぎて、あっという間に搭乗開始のアナウンスが入った。
ラウンジには客らしき人たちがいなかったにもかかわらず搭乗する飛行機は満席だったようで、団体行動をするオレたちのことがバレるのではと少し冷や汗をかく。
が、航空会社の計らいで人知れず搭乗することが出来て一安心する。
そうして羽田空港を定時に出発した飛行機は途中何事もなく無事に那覇空港に到着した。
接続されたタラップから外に出ると、一気に亜熱帯の空気に出くわす。
沖縄は例年よりずっと早い梅雨明け宣言が出されたばかりで、日差しと暑さが夏のものに変わっていた。
それでもその暑さは、ヒート・アイランドと呼ばれる都会の暑さよりもずっと快適だ。
「このままホテルに向かうのか?」
「そうしたいが…、チェックインの時間にはまだ早いだろ」
「じゃあ荷物だけでも預かってもらえばいいんじゃない?」
「そうするか」
そんな会話を交わすメンバーの様子を窺う。
(どこでどうやって抜け出そうか…)
オレがいち早く沖縄入りすることにしたのは、仕事以外で沖縄に来る目的があったためだ。
それはメンバーには絶対に知られたくないコトだったため、とりあえず一緒に宿泊先のホテルに入ってから別行動をするつもりでいた。
……偶然、空港で『彼女』の姿を見つけるまでは。