終わらない夢を紡ぐキミに
□記憶・幸せが壊れる音 with 本多一磨
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「おはよう、海尋」
「わ……びっくりした。 おはよう」
顔だけ少し振り返って言うと、頬に優しいキスが落ちてくる。
そのあと、ふくらみが目立つようになってきた私のお腹に手を当てて、
「美音も、おはよう」
と声をかけた。
その様子に、彼がどれほど子どもの誕生を心待ちにしているのかが分かる。
そんな彼を見ると幸せを感じて、自然と笑みがこぼれてしまう。
「……まだ、胎動は感じない?」
穏やかな微笑みでそう尋ねる彼。
だけど、胎動がどんなものが分からなくて、
「ゴメン、どんなカンジなのか分かんないから何とも言えないの」
と、私は曖昧な笑顔を返す。
「そうなんだ。 …早くわかるようにならないかなー」
と彼は言いながら洗面所に向かって朝の支度を始めた。
その間にダイニング・テーブルに朝食を並べて彼が支度を終えて着席するのを待つ。
そして、二人そろっての朝食。
会話は自然と生まれてくる子どものことが多くて、つい話しこんでしまう。
朝食のあと、一磨が後片付けをしてくれてる間に私も出掛ける準備をして、一緒に仕事に向かう。
それがいつもの朝の日常だった。
そして、今日もいつもと同じ朝だった。