終わらない夢を紡ぐキミに
□記憶・暁月の下に…そして、盈月のように by 中西京介
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一磨は弱音を吐きつつも、あれからも『彼女』の行方を探し続けている。
が、まだ見つかっていない。
夫であった一磨でさえ見つけられないのに、オレなんかが見つけられるわけがないか……そう思ったとき。
はるか前方の右手のほうから広い野原の中心に向かって、誰かが歩いてくるのが見えた。
「え…」
生命が満ち溢れているその場所に似つかわない黒のワンピースを着た華奢な女性。
でもそれがかえって肌の白さを際立たせていて。
後ろ手を組み、時折吹く風に漆黒の長い髪をなびかせて、その人は何かの歌を口ずさみながら野原を歩いている。
そして、時折り空を見上げて、澄んだよく通る声で歌い続けている。
見とれて立ち尽くすオレに気付いたのか、歌の途中でゆっくりとこちらを振り向いた。