終わらない夢を紡ぐキミに
□朔月の迷い道-labyrinth- with 中西京介
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(よかった…まだ帰ってないみたい……)
そう思った瞬間、浴室に続くドアが開いて、シャワーを浴びた直後らしい京介くんが髪を拭きながら出てきた。
私は思わず小さく驚嘆の声を上げて身をびくつかせ、身体を固くする。
「……海尋?」
京介くんは私の様子を不思議そうに見た。
「あ……お、おかえりなさい……」
「ただいま。 ……どうしたの?」
「な、なんでもない」
あんな夢を見たコトに、何故か彼を裏切ったという罪悪感を感じて焦ってしまう。
「顔、赤くない…? 息遣いも荒いし。
調子が悪いの……?」
「…っ!」
心配して頬に触れようとした彼の手を瞬時に振り払ってしまった。
何故か、触れられると全てを知られてしまいそうな気がして。
「! 海尋……」
「あっ…ご、ゴメンなさいっ……」
京介くんは傷ついたように哀しそうに瞳を伏せる。
その表情に心が痛んだ。
「きょ、京介くん、あの……」
「……遅いから寝るよ?」
そう言って彼は、バスローブを脱いで、ベッドの自分の定位置に横たわる。
(…え……?)
いつもなら、横になると同時に「ほら、おいで?」と両手を広げて私を迎え入れようとしてくれるのに、今日はそのまま目を瞑ってしまった。
そんな、いつもと違う態度に戸惑いながらも、私は彼に背を向けて横になった。
(…もしかして……聞こえてた…?)
そう思いながらも、本当にそうだったらと思うと怖くて訊けない。
なぜなら、いまこうやって私のそばにいて私の心を支えてくれているのは京介くんで。
そんな彼を裏切るような夢を見た。
焦りと戸惑いの中、さっき見た夢のせいで身体の奥深くが熱く疼いているためか、何度かピクリと動いてしまう。
なんとか鎮めるために、水を飲みにいこうと体を起こした。
と、京介くんが口を開いた。
「………聞こえてたよ?」
暗く冷たい声だった。