Hazardous Material

□Prologe / Dirty Idol
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Dirty Idol-穢れたアイドル-





―――それは3か月前、彼女と一緒に出演した歌番組の収録の後のことだった。

反省会の後、Waveのメンバーに抜け駆けしてオレはいち早く彼女の控え室を訪れた。



「海尋ちゃーん、いるぅ?」



軽い気持ちでドアノックと同時に開けた彼女の控え室の扉。

そのとき奥から聞こえてきた、男たちの声―――。



「やべっ、お前、鍵かけなかったのかよ!」

「いつも誰も来ねーだろーが!」



言い合う会話が聞こえた瞬間、弾かれるように誰もいない控え室を駆け抜け、奥の部屋に飛び込んだ。

と同時に目に入ったのは―――薄暗い部屋の中で焦ったように服を着る男二人と一糸纏わぬ姿で横たわる彼女。



「お前ら……何してんだよっ!!!」



カッとなって、そう叫ぶと同時にオレは殴りかかる。

だけどこちらが一人だったせいか、反対に返り討ちにされてしまった。



「アイドルだからな、顔だけはやめといてやる、よっ」



一人の男に羽交い絞めにされると、もう一人の男が腹を思いっきり殴る。

その激しい痛みにオレは顔を歪めて身を屈めた。

そこにもう一人が同じように腹を蹴る。内臓が全て飛び出るかと思うような痛みにオレは床にうずくまった。



「ちっ…今日はやめとくか」



そのセリフとヤツらがベルトを締める音を頭上で聞く。



「じゃあな、海尋ちゃん、またよろしくー」



下卑た笑い声をあげながら彼女の控え室を出ていくヤツら。

オレは四つん這いの状態で腹を押さえながらヤツらの背中を睨む。

ヤツらの足音が遠ざかっていく中、オレの後ろで衣擦れの音がした。

振り返ると、何も着ていない上半身を茫然と起こす彼女がいた。



「……だ…れ…?」



彼女からは逆光になっていて、オレのことが分からないようだった。

オレは咄嗟に近くにあった大きな布で彼女の体を包み、全身で抱きしめた。



「な……んで…こんなことに…っ…」

「……え……亮太…くん…?」



その次の瞬間、オレは彼女に思いっきり突き飛ばされていた。

そして哀しみに満ちた表情で彼女は―――その大きな布を頭から被り、うずくまって泣き叫ぶ。



「いやぁぁぁっ………

…見ない…で………見ないでぇぇ…っ……」



薄暗い部屋に響き渡る、彼女の悲鳴。

でも、どんなに泣き叫んでも外には聞こえない。

どんなに助けを求めてもココには誰も来ない。

何故ならこの部屋は廊下の端にあって、普段は誰も使わないのだから。

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