Hazardous Material
□Hysteria / Counterfeit Lovers
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夜の街を走り抜け、海に向かった。
海岸道路沿いに林立するある建物の駐車場に入り、その入口受付で鍵をもらって指定された一角に車を停める。
車から降りるとオレは駐車場備え付けのプレートを上げてナンバープレートを隠し、助手席に回る。
「考え直すなら…今のうちだよ?」
そう言いながらも、車の助手席側のドアを開け、まだ降りようとしない彼女に手を差しのべた。
海尋ちゃんはうつむいていたけれど、オレの手をとって車から降りた。
二人とも沈黙したまま、駐車スペース脇にある、すぐに部屋へとつながる階段を上がっていく。
部屋に入って鍵を閉めると、彼女は背中からオレを抱きしめた。
「……ホントにいいの?」
何度も尋ねたのは、心のどこかで自分の罪を軽くしたかったからなのかもしれない。
流されて抱くのではなく、彼女が自分の意思でオレに抱かれるコトを望んでいると、自分自身に言い聞かせるために―――。
少しして、彼女が頷いたことを背中で感じた。
彼女の抱きしめる腕が緩んでオレは彼女のほうに向きなおり、頬を撫でて俯いている顔を上向かせる。
そして、その唇に唇で触れた。
「……抱かれる前に…シャワー、浴びてもいい?」
唇が離れて少し見つめあった後、彼女が自嘲気味な微笑みでそう言った。
オレは頷いて、額にキスをする。
頬を少し赤らめて恥ずかしそうな仕草で海尋ちゃんはシャワールームに向かう。
「……全部洗い流せられればいいのにね」
と小さく呟いて。
彼女はしばらくの間、シャワールームから出て来なかった。
思わず言ってしまった自らの言葉にさすがに後悔しているのかと思い、気になってシャワールームに近づくと―――扉の向こうから、流れる水の音と一緒に嗚咽が聞こえてくる。
「海尋ちゃんっ!」
扉を開けて中に入ると、彼女はシャワーを頭から被るように座り込んで、泣き続けていた―――。