Hazardous Material
□From Darkness To Brightness / Pure White
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それから車で海に向かい、少し隠れ家的なレストランへ彼女を連れていった。
オレが真剣な表情で話があると言ったせいか、彼女はずっと不安げだ。
これじゃ味も分からないだろうと思い、出来るだけ明るく話をしながら食事をしていたのだが、彼女の瞳はずっと怯えたように揺らめいている。
―――先に言ってしまったのは失敗だったか?
そう思いながら少し気まずい雰囲気の中、食事を終え、これから彼女に想いを伝えるのにふさわしいと思ったその場所へと移動した。
それは、あの日、初めて彼女を抱いた場所。
正確に言うと、あのモーテルの近くの海岸。
誰もいない駐車場に車を停め、砂浜を少し歩くことを提案した。
助手席に回ってドアを開け、スッと手を出すと、彼女はオドオドと自分の手を重ねる。
手のひらにすっぽりと隠れてしまう、その小さな手をきゅっと握って、波打ち際まで歩く。
海から吹く穏やかな風が心地よかった。
「海尋ちゃん」
呼びかけると、彼女が体をビクリとさせたことがつないだ手から伝わる。
次の言葉を……とは思うけど、ドキドキしていて上手く言葉が出てこない。
オレらしくないと思いながら、深呼吸をしてようやく口を開く。
「……………海尋ちゃん…は……オレのコト、どう思ってる?」
「……え?」
突然の言葉に彼女は顔をオレのほうに向け、戸惑いの表情で短く聞き返す。
「オレ……海尋ちゃんのこと、好きだよ。 だから……。
……付き合って欲しい」
彼女の瞳が見る見るうちに開かれていく。
だけど、その瞳は一瞬のうちに哀しみを含んだものに変わり、彼女はうつむいて首を横に振る。
「……私には…亮太くんに好きになってもらえる資格なんて…ない……」
「どうして?」
「……だって……あんな……」
「好かれる資格ってなに?
そんなのはオレが決めんの。
オレのことを好きでいてくれて、わかってくれる…それだけでいいんだから。
それとも、海尋ちゃんはオレのこと……嫌い?」
そう言って視線を彼女の瞳の高さに合わせ、上目遣いで彼女を見る。
そのあと、頬を赤らめた彼女をそっと優しく抱きしめる。
何度も背中を撫でていると、彼女はおずおずとオレの背中に手を回してきた。
「……私も…亮太くんのこと…ずっと好き、だった……」
「え? 過去形なの?」
挙げ足をとるようにワザとおどけて言って体を離し、顔を覗き込む。
すると、彼女は頬をさらに赤く染めて「……今も、好き」と小さな声で言って、顔をオレの胸に埋める。
「じゃあ…これから作っていこう。 ……オレたちの時間を」
少しして彼女は腕の中で頷いた。
―――対岸の遠くに見える、都会の夜景の光。
宵闇の中に聞こえるのは穏やかに寄せる波の音。
それらに包まれながらオレたちは熱く口づけを交わした。
お互いの思いを確かめ合って、もう一度一つになれた夜だった―――。