Hazardous Material
□From Darkness To Brightness / Pure White
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Pure White
-無垢なる白-
―――その次の日の朝、カーテンの隙間から洩れる朝の光が眩しくてオレは目を覚ました。
腕にかかる微かな重みは、告白を受け入れてくれた彼女の身体―――。
髪を梳くように頭を撫でてやると、小さな声をもらして彼女は目を覚まし、眠そうな瞳でオレを仰ぎ見た。
「……亮太くん…」
そう呟いた後、頬を赤くして恥ずかしそうにもう一度オレの胸に顔を埋める。
「おはよ。 ……海尋」
昨日の夜は何度もその名前を呼びながら彼女を抱いた。
激しさもともなう中、出来るだけ優しく、いたわるように。
成り行きで抱いたあの日と明らかに違うのは二人の関係だ。
直接伝わる素肌の体温から愛おしさが溢れてきて―――朝の光の中、オレはもう一度彼女と愛し合う。
それから、ベッドを照らす日の光の中で、白いシーツに包まりながらオレたちは抱き合っていた。
額同士をくっつけるように顔を寄せ合い、クスクスと笑い合って。
悪夢はもう終わったのだという、その安心感に包まれた彼女は幸せそうな笑顔を見せる。
海尋ちゃん―――海尋のその笑顔がオレの心を落ち着かせる。
明るく温かい日差しの中、オレたちはもう一度口づけを交わした。
二人でいられる幸せに身を浸し、これから始まる、二人の未来に思いを馳せて。
午後、お互いに仕事が入っていたので、一緒に部屋を出た。
そのときちょうど部屋を出てきた一磨と出くわす。
彼女を連れていることに少し気まずい思いはしたが、一磨はオレの頭をこぶしでコツンと叩いたかと思うと、何でもないという風に笑みを見せて海尋に声をかける。
「おはよう、海尋ちゃん」
「お、おはようございます……」
彼女は頬を赤くしてペコリと頭を下げた。
エレベーターを待っている間にも他のメンバーがエレベーターホールにやってきて、彼女の姿を見て驚きつつも、いつもと変わらない様子でオレたちに声をかけてきた。
それから、一緒にエレベーターで下に向かったのだが、その中でメンバーたちからは冷やかしの声が入った。
「よっ。 よかったな」
翔が笑いながらオレの肩を小突く。
「海尋ちゃんのかわいい声、丸聞こえなんだけど」
京介がニヤニヤしながら海尋の顔を覗き込むと、彼女は顔を真っ赤にさせた。
「京介、からかってやるなよ」
一磨は呆れたように京介を窘める。
「でも、ホントによかったな」
いつもならあまりそういうことを言わない義人も今日は笑って言う。
みんなが祝福してくれていることが伝わってくる。
オレたちはまもなく到着するという迎えの車が来るまでエントランスで待つことにしていた。
彼女の仕事が同じ局だったなら一緒に乗せるコトも考えたけど、今日は反対方向にある局だったため、海尋は電車に乗って仕事に向かうと言った。
「海尋、終わったら連絡ちょうだいね。
迎えに行くから」
海尋は少し照れくさそうにしながら、コクンとうなずいた。
オレはメンバーの前であるにもかかわらず、彼女の頬にそっとキスをする。
「オレたちの前でいきなり呼び捨てかよっ」
「当てつけがましくキスなんてするかー?」
すかさず翔と京介から冷やかされ、その様子に顔を赤くした海尋がクスクスと笑う。
「じゃあ…いってきます」
そう言うと、頬をほんのりと赤く染めたままの彼女は、満面の笑顔で手を振って、そして駅に向かって歩いていった。
マンションの前の並木道を栗色のセミロングの髪をなびかせながら歩いていく海尋。
彼女の姿が見えなくなるまで、その後ろ姿をいつまでもオレは見つめていた―――これ以上ない、幸せな気分に浸りながら。