想像ストーリー☆

□重なる思い(内×中)
1ページ/2ページ

視界が90度変わって見上げた天井には貴方の表情が映った。

今までにないほど優しい微笑みに、僅かな悲しみを含んだ貴方の顔が。


「嫌なら嫌と言え」

震えている右手が私の左頬を撫でた。

「抵抗もしろ」

嫌ならば、と後付けをした貴方は、私の両手首を拘束している左手の力を抜く。

どうして、この様なときに限って優しくするんですか?

いつものように私を罵倒して見下してくれればいいのに。

重ねられた唇に非難という名の舌を自ら差し込む。

恥ずかしさで顔から火が出てしまいそうだ。

その非難を受け取るように貴方の分厚い唇の中から温かい舌が私の口内に入ってくる。

「ん……、はぁ……」

「……どうしてだ」

離れた温もりからこぼれる言葉。

一つ一つが鼓膜を揺らし、今目の前に居るのが貴方だと知らせてくれる。

「嫌だろう、こんな事されて」

「…いやじゃ、ありません」

眉間に寄せられた皺が薄くなる。

丸いレンズの向こう側にいる目が丸くなり、私の視線と交わった。

「あなたが……、すっん、ふぁ……ぅん」

思いを伝えようとした途端、口唇が重なり、言葉はかき消される。

その重なりは先程よりも優しく、しかしとても深いもので、脳の奥が甘く痺れる感覚に陥った。

暫くして貴方の唇が私のそれを解放し、加えて言葉を重ねる。

「馬鹿者、それは私の台詞だ」

「けいじぶちょう……」

慈しむような声色の罵倒に、思わず頬が緩む。

すると貴方の口唇も綺麗な弧を描いた。

「お前が私に特別な感情を抱いているのは気付いていた」

「……え?」

「分からないと思ったか? 事あるごとに私を見て、目が合えば顔を真っ赤にして逸らしただろう?」

「はっ」

貴方の仰ること、全てが図星。

思わず声があがった。

恋は盲目。

そんなに見つめて居たのだろうか?

全く気が付かなかった。

「私はだ中園、お前が好きだ」

「……わたしも、です」




刑事部長室に差し込む、夕暮れの茜色を背に、再び青色の制服が重なった。

浅く、触れるだけの口付けに心臓が高鳴る。

私達の歩みは始まったばかりだ。







あとがき→
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ