短編

□もっと甘いご褒美を
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日差しの強い晴天の日は
洗濯物がよく乾くから助かる。

この白ひげ海賊団の中でナースの次に非戦闘員の私は
洗濯物や掃除、各隊長のお手伝いなどの雑用が主な仕事なのだ。

そして仕事を早く終わらせれば いい事 があるのだ。



日給といったら例えやすいが
お金を貰っても服や美容などにはあまり興味がないので
いつも仕事が終わると隊長さん達からいろんなものが貰えるのだ。

たまに隊長さん達の技が見れたりするので結構お得な仕事だと自分で思っている。


一日交代で隊長さん達のお手伝いをしているが

マルコ隊長は別なのだ。





「マルコ隊長!」





マルコ隊長は私を拾ってくれた命の恩人であり


「仕事はどうだったよい」




お仕事を紹介してくれるいわゆる店長さんなのだ!










「今日はとても天気がよかったので洗濯物はすぐ乾いていつもより多く出来ました!」

敬礼しながら報告すると
メガネをかけて大量に積まれているいる用紙を一枚一枚退治しているマルコ隊長が立ち上がった。


「そうかい、なら褒美だねい」




マルコ隊長の机には不釣り合いなものがひとつだけある。

ビンの中にいっぱい入ったカラフルな、
普通より少し大きめな球体。



初めてマルコ隊長に買ってもらってから
私のお気に入りの飴だ。


マルコ隊長はいつもそれをご褒美にくれる。


キュポンと蓋を開ければ甘い匂いが広がった

少し隊長の顔が歪んだ。
前に聞いたらあまり甘いのは好きではないらしい。


それなのに机にいつも置いていてくれるということは

私のため、と思ってもいいのだろうか



「ほら、今日は桃色だよい」

さらに勘違いしそうになる事がもう一つ。









「口、開けろい。」


隊長はかならず口に直接入れてくるのだ。

口を開いて待てば
少しずつ飴を持っている手を狭めて、

ゆっくりと口の中へ入れる

その間隊長の指は私の唇に触れていて



指を狭める隊長はすごく楽しそう



少しは私に気があるのかと

勘違いをしてしまう




カランと口に入ればじんわりと味が広がり

口の中も心も

甘い気持ちになった。





しかし隊長は飴が口に入るとすぐ椅子に座って用紙を睨めっこをする。



「食べ終わったら今日はエースの所にでも行って来い。」


目も合わせずにそれだけ言うと隊長は黙々と作業に取り掛かった。



からかわれているだけなのだろうか。



私が男性との関わりがまったくと言っていいほどないから、

反応を見て、楽しんでいるだけなのだろうか。





舞い上がって後悔するのもいつものことだ。




そして最近私はこっそり飴を噛んで部屋を早めに出るのだ。
















「エース隊長」

お手伝いに来ました。

甲板の塀に座って釣りをしているエース隊長の背中へ言えば彼はくるりと振り返った


「お−!名無しさん!一緒に釣りしようぜ」


エース隊長は大抵仕事らしきものをしていない

仕事と言う名の遊びだと彼は笑って言っていた。

バレると怒られるらしいので私と彼の秘密だ。



そして秘密を守る代わりに、




「そんで!マルコとはどーよっ」



彼にはマルコ隊長のことを相談している。




「それが…」

変化などないのでこの先を言わずにため息を吐けばエース隊長は笑って励ましてくれた。


「だよなー!ずっとそうだもんなお前」


いじわるそうに笑う彼だがちゃんと話は聞いてくれる。

最初は相談相手を間違えたかと思っていたが


「俺な!いろいろ考えたんだ!!」


ちゃんとアドバイスもくれるのだ
しかしほとんどが私には到底出来ないものばかり。



「やっぱり告白するのが一番手っ取り早いぜ!」
「だからそれが出来たら相談してません!」
「えー…んじゃあ襲え」
「エース隊長私ができると思って言ってますか?」
「思ってねぇ!!!」
「なら言わないでくださいよー!!!!!」



そして大半私をからかうためにアドバイスをくえる。


「まぁ本題はここからだ」

よっと竿を引きながらエース隊長は少し真剣な顔をした。



「飴、拒否ったらどう…よっ!」



どっこいしょーーー!を勢いよく引けば
キラキラ雫と一緒に魚が釣れた。

…本題ってまさか…魚?

私やエース隊長の身長を大きく上回る魚は
甲板の上でビチビチ跳ねている



「飴よりもっとほしいものがあるって」

ねだってみろよ




たまにエース隊長はかっこいいから困る




「マルコーーー!名無しさんが大物釣り上げたぜーーーっ!!!」


頑張れよと背中を軽く叩いた後、
大きな声でマルコ隊長を呼ぶエース隊長。

どうやらすぐにでも実行しろとの事


魚を片手で持ち上げる時に

「たとえばキス、とか」

と、手を振って食堂へ行った。


それはちょっと無理かな〜という思いをこめながら振かえした。






「本当にお前が釣ったのかい?」


ずいっと肩あたりから声が聞こえて
びくりと反応し振り返れば
マルコ隊長が笑いを堪えていた。


「…二人で協力して釣りました」


エース隊長のせっかくの案を無駄にするわけにも行かず、ちょっぴり嘘をついた。


ぴくりと隊長の眉が動いた気がする。




「じゃあまた褒美だねい」

名無しさんのおかげで今日は派手なな夕食になりそうだよい。


すいません本当はエースの手柄です

なんてことは今更言えない。








「それにしても…あんな大きいキスなんていたかねい」


カタカナ二文字の単語に過激に反応した






き、聞かれてた…!


「え、えええエース隊長がま間違ってるんですよ!!!!」

きっと!!!

よかったその単語しか聞こえてなかった!!!




すーはーすーはー気持ちを落ち着かせてふと隊長を見れば


「ほんと…おもしろいねい…」

そんなに反応するなんて、ねい。











ああああああああああバレてる。











「ウブっていうのかねい。」

可愛らしいことだい

とクツクツ笑いながら頭を撫でる隊長。



バレて…ない…?




おっと忘れるところだったよい。

ふと思い出したかのように着いておいでと手で招くるのでついていくと



部屋へ。

来た。




『飴、拒否ったらどうよ』





…これぐらいなら実行できるかな…

コロンと飴を取り出す隊長めがけて、



「あの!あ、飴はももういいいいです!!」


うああいっぱい噛んだ…!


勇気を振り絞っていうと

隊長は音でたとえるとポカーーンとしていた。


否定的なのしたの初めてかも…





「そうだねい、さっきも食べたもんねい」


そりゃそうだと言いながら飴の蓋を閉めた。


お、おおお…成功…した…?




「じゃあどうする」


他にいい褒美でも思いついてるかい?


いつも飴をくれた隊長は
何かを渡さないと気が済まないらしい。



他のいい褒美…








『たとえばキス、とか』












ふっくらしてて


マルコ隊長のは


柔らかそうだ







「名無しさん…?」






…っ!!!!!!!!


「あああややややあのそのすいません
そういうのはべつにあのその…!!
うおおああああ!!!」


エース隊長のお馬鹿ーっ!!!!



全体的に体が熱くなって

隊長の目が見れなくなっちゃって

あ、でも私唇しか見てなかっt

あああああそっちも見ちゃダメだよ!!!!



申し訳なかったりちょっと期待したり
その気持ちを殴りたくなったりして

もう普通に立つことさえ無理でした




「名無しさん。」


がっしりと顔を掴まれて

はっと我に返った。




じーーーーっと見られる


突き刺さるような視線は



何かをたくらんでいる
もしくは怪しんでいる




伏せ目な感じで若干睨んでくる隊長を

まともに見れるはずもなく、


ふいに下へ目線を降ろすと






近くに隊長の唇があった







『たとえばキス、とk



そろそろ心臓が破裂してもおかしくない気がします。









「名無しさん。」


名前を呼ばれることさえ体は反応した

近くに隊長がいるせいだ






「ほんと」



お前は










「可愛いよい」








気がつけばもう距離などなくて

ふにっとした感触が口にあたった

その正体がやっと分かっても



金縛りにあったように体は動かず、




ただ隊長のシャツを握るしかなかった





たまにふに、ふに、と動く唇に

ぴくぴくと反応すれば






唇だけじゃなくて





体も密着してしまった








緊張と恥ずかしさがピークに来てしまい、


半ばやけくそのように背中に手を回した







これで冗談だったり

いじわるだったりしたら



許さないんだから



ぎゅうううううと背中を抱けば









顔の角度が変わって















ものすごく墓穴を掘った気がした

















(拾ったときから奪われてたのはこっちだ)
(だいたいエースとばっかり話してたから)
(ついついいじわるすれば)
(拒否されるし)
(ショックが隠し切れなかったけど)
(口ばっかり見てくるし)
(思わずやってしまえば背中に手をまわすし)


(初心者だからってもう容赦はしないよい)
(へ?)
(俺は待つより攻めるほうが得意みたいだしねい)
(ああああああれは隊長があああ!!!!)
(もっと抱きついてきたのは誰だったかねい)
(忘れてくださいいいいいいい!!!)







―――――――――――――――――

かっこ多すぎましたね






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