罪人の国のアリス

□罪人の国のアリス
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(ハァハァハァ)

いつまで走ればいいの?

追いかけても

追いかけても

追い付かない。

走っても

走っても

きりがない…



(ハァハァハァハァ)

必死になって

追いかけた。

あの兎は

何か知っている。

わたしの

知りたいコトを…

あの兎が

持っている懐中時計、

見たことのある…

懐中時計


気がつくと、

兎の姿は消えていた…



「探さないと!」

必死になって探す…

走っていると目の前に…

黒猫がいた。



「く…ろ、ねこ?」

黒猫はじっと

わたしの顔を見ている。

「??」

黒猫は鳴いた。

「ニャーォ」

黒猫の足下に

鍵がある

「鍵?」

不思議そうにみていると

また、黒猫が鳴いた。

「ニャーォ」

「どうすんのさ?」

なんとなく黒猫に聞く。

すると黒猫は

鍵をくわえてこちらを見上げる。
「持てと?」

すると黒猫は小さく

「ニャ」

と鳴いた。

仕方なく鍵をもつ。



すると黒猫は

ニンマリと笑った。

空が赤く染まる



すべてを塗り替えて

赤く赤く赤く

眩しくて

手をかざした。



アナタとの思い出が

頭の中を駆け巡る。

鍵をかけたはずの

扉が開いた…

止まっていたはずの

時間が動き出す…



あぁ、

そうだ…

私は

ワタシが

アリス…

あの、

不思議の国に行った

アリス…

さっきの黒猫はいつの間にか

ワタシの肩にのっていた。

そして耳元で

「お帰り、僕らのアリス」

と言った。

「ただいま、チェシャ猫。」

チェシャ猫は

ニンマリと

笑いながら言う。

「アリス。さぁ、白ウサギを追いかけよう。」

「そうね。」

ワタシは言った。

するとチェシャ猫は

ニンマリ顔で、

すーっと消えていった。



さぁ、

白ウサギを

追いかけないと…

止められた時間が

動き出した限り、

白ウサギを捕まえないと…

白ウサギは

どこかな?

どこかな?

どこかな?

どこかな?

どこかな?



ここかな?



いない…


ここかな?



いない…


ここかな?



あっ!


いた。


みぃつけた♪


「こんな所にいたの?」



「ア、アリス!?」

「白ウサギさん、その懐中時計…ちょうだい?」

「こ、断る!!」

「なぜ?」

「君の…」

その続きを言ったのは、

白ウサギでも、アリスでもなかった。

「記憶の断片が入っているから。」

「チェシャ猫!?」

「でしょう?白ウサギ」

「そうだ。」

「私の記憶の断片なら、私に渡すべきだわ!ねぇ?違うかしら?」

チェシャ猫は言う。

「僕はそう思うよ?」

白ウサギは迷った…

「そ、そこまで言うんだったら…でも、何が起こっても知らないからね?」

「大丈夫よ!!」

「本当だね?」

「ええ!!」

「はい。」

アリスは

白ウサギから

懐中時計を受け取った。

その瞬間、

記憶の断片が

フラッシュバックする。



辺り一面の血の海。



白い壁には血が飛び、



包丁も



ハサミも血だらけ…



白い壁に

助けを求めてついた手形



私の手には…



大量の血…


辺り一面の血と死体…


あぁ…

ワタシが、

みんなをコロシタ…

ワタシが

友達も家族もコロシタ…

そして、

チェシャ猫達が

現れた…


ワタシが

行った国は…

不思議の国じゃ

なかった…


そう…

あそこは

『罪人の国』

チェシャ猫が笑う。

「やっと思い出したね、
アリス。」


「チェシャ、猫…ワタシは、酷い子だったのね?」


「酷い子。残酷な子。」

白ウサギも言う。

「そして、醜い子。」



そこで意識はトダエタ




目が覚めると、

朝日が眩しくて

不意に手をかざした。



ワタシは、


罪の子。

「もしも、
生まれ変われるならば…」


「蝶がいいな…」









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