番犬だって捨て犬だって犬は犬だ!

□番犬だって捨て犬だって犬は犬だ!
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「坂田氏ィ─坂田氏ィ─!!」

聞き慣れたこえにふと我に返る。

後ろを振り向くと、

走りながら泣きそうになっているトッシー。

「うぉっ!」

グィっと左腕に衝撃が加わり、

変な声が出た。

俺の左腕に、

自分の右腕を絡め、

俺を見上げるトッシー。

「ひ、酷いでござるよ坂田氏ィ─。置いていかないでほしいでござる…」

目を潤ませる。

かつての

『土方 十四郎』

の面影は微塵もない。

昔…いや、

本物の『土方 十四郎』は野良犬に近い番犬だった。

偽物…いや、

トッシーは捨てられた子犬のように臆病だ。

「悪かった。」

そっけなく言った。

別に怒ってるわけでも、

不機嫌なわけでもねぇ。

ただ、

何かこう…

忘れてるような気がしてならねぇ

胸の中がむなくそわりぃ。

いやな予感が頭から離れねぇ…

何か、何かがおかしい。

「坂田氏??」

怯えた顔。

俺の顔が険しくなっていたのだろう。

「わりぃ、考え事を、な。」

そう言って空を仰ぐ。

おかしいのは俺かもしれねぇな。

柄にもなく何真剣に考えてやがるんだ。

トッシーに目を向ける。

キョロキョロと辺りを見ている。

まるで、

知らない所に連れてこられた子犬だな。

不安そうに怯えながら

それでいて

好奇心で目を輝かせてやがる。

ふと前を向くと

よく行くだんご屋

「おい、トッシー」

「何でござるか?」

「だんごでも食うか?」

だんごを指差して言う。

「はいでござる!」

ニッコリと笑うトッシー。

あ…れ?

この光景、、、

前にもあった気が…。

『デジャブ』

いや、

気のせいだろう。

頭を振りその考えを否定する。

「どうしたでござるか?頭なんて振って…」

「いや、何でもない。」





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