きまぐれ猫とキセキ。

□side You
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昼休み。移動教室だった私は千代ちゃんと一緒に廊下を歩いていた。流石昼休み、というところだろうか。人通りは多く、注意しないと人とぶつかりそうだ。そんなことを考えていると隣を歩いていた千代ちゃんがねぇ、と話しかけてきた。


「次、何やるっけ?」
「実験じゃなかった?」
「うわっ めんどくさ〜…凪、あたしのもやってよ」
「いや、自分でやらないと意味が…っと、ごめんな、さ……?」

次の授業、生物の話をしていると誰かにぶつかってしまい、あやまろうと前を見るが誰もいない。ついに超常現象に、と思っていると、控えめな声で、あの。と話し掛けられた。すると、今までいなかった人がそこにいた。

「すみません、本を読んでいて前を見ていませんでした」
「あ、いや、こっちこそごめんなさい、ぶつかっちゃって」

綺麗な青だな…。と思った。空色の髪と、同じ色の大きな瞳。しかし、前を向いていたのに何故いきなり目の前に現れたのだろう。隣の千代ちゃんなんて驚きすぎて口が開いている。このままだと帰ってきそうにないので声をかけてみると、あ、ごめん。と言ってくれたのでもう大丈夫だろう。
自分の世界に飛んでいってた千代ちゃんを覚醒させているとまた、あの。と話し掛けられ、空色の瞳を見る。……あれ。どっかで会ったことある…?


「次、移動…ですよね?多分急いだ方がいいと思いますよ」
「え……、うわ、千代ちゃん時間…」
「もう?まー大丈夫。間に合う間に合う」

自分の腕につけている時計を確認すると、チャイムがなるまであと5分というところ。焦り気味に千代ちゃんに話しかけるが、マイペースな友人はへらりと笑うだけで急ごうとはしない。
まぁ、大丈夫か。と半ば諦めて先を急ごうと出しかけた足をとめ、空色の彼に一言告げる。

「ぶつかっちゃって本当にごめんなさい。あと時間、ありがとう」
「いえ、気にしないでください。じゃあボクはこれで」

そういって私の横をスッと通り過ぎて行った。何か、印象的な人だったな…と思い、ふと時計を見ると、2分前。

「ちょ、次はホントにヤバいよ千代ちゃん!2分前!」
「え、ウソ。急ごう凪!」
「う、うん!…って、あれ。」

急がねば、と走り出した千代ちゃんの後に続くために足を踏み出そうとしたのだが、足元に落ちていたあるモノに目がとまる。

「黒子、テツヤ…?」

拾い上げると、それは栞だった。白地に水色で模様のかかれた薄めの厚紙に、細い水色のリボンが結ばれているだけのどこにでもあるようなしおり。何かあるかと言われれば、裏に丁寧に名前がかいてあるところだろうか。
多分、この"黒子テツヤ"とは先ほどの空色の少年だろう。にしてもどっかで、聞いたことがある…ような?しないような…。
後ろを振り返ってみるがいるハズもなく、そのしおりをポケットにしまうと、凪は走り出した。

授業開始のチャイムが鳴り始めるまであと数秒…。







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