きまぐれ猫とキセキ。

□side You
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6時間目。午前中の授業をこなし、昼食をすまして空腹を満たしたところにポカポカと気持ちの良い日差し。これは今寝たらお昼寝には最適な状態である。


……のはずが。


「ちょ、千代ちゃん!?それはまだ入れちゃ駄目だってば!」

「え〜?最終的には全部入れるんだし何時入れてもいいじゃん」

「それしちゃダメなのがお菓子作りなんだけど…」


今日は家庭科の調理実習があって、同じ班の千代ちゃんとある意味戦闘中。
――あれ、なんで私こんなに頑張ってるんだろう……。とか思ったけど気にしちゃ負けだと思う。

そんなこんなで、今は調理実習の真っ最中。千代ちゃんとの格闘を終え、無事焼き上げることのできたチーズスフレケーキを冷ましている。


「おおー、綺麗に焼けたね」

「うん。まだ触らないでね、崩れちゃうから」

「わかってるよ」


ほおっておいたら今すぐにでも型から外してしまいそうな千代ちゃんを緩く牽制し、手がすいた時間を有効活用して洗い物をする。

さて、このケーキはどうしよう。自分で食べてもいいけど、一人二つずつもらえるみたいだし、悠哉と奏にあげようかな。あ、それがいいかも。昨日お菓子が食べたいって言ってたし。

決定、と自分の中で結論付けたときにちょうどきり良く洗い物が終わったので、キュッと水道の蛇口をひねる。洗い終わった器具を布巾で拭こうとすると、同じ班の女の子たち三人が笑顔で手伝ってくれた。ちなみに千代ちゃんはシンク周りを拭いてくれてる。私はというと手持無沙汰だ。


「凪ちゃん洗い物してくれてありがとうね!」

「気にしないで、手伝ってくれてありがとう。拭くのお任せしちゃってごめんね」

「全然!むしろまかして!」

「ほとんどやってもらっちゃったし、片付けぐらいはね」


頬を緩めてお礼を言うと太陽のような笑顔で返してくれる。あぁ、可愛いなぁ。おもわずおじさんみたいなことを思う私。


「凪ちゃんすごい慣れてたね!家でもよくやるの?」

「うん、趣味みたいなものかな」

「すごい!女子力高いね!私も見習わないと」

「私もだなー、料理なんて全くしないし」

「私も。お菓子なんてもっての外」


尊敬のまなざしを送ってくる三人に苦笑を返しつつ、三人が拭いてくれた器具をまとめてなおしていく。


「んー、やりはじめたら楽しいよ?」

「うん!今日楽しかった!!」

「またやりたいよね」

「でもできない人集まっても結局失敗しそう」

「……確かに。典型的な失敗しそう」

「黒焦げとかね」

「マンガみたいって言いたいとこだけどやりかねないね……」

「あ、よかったら凪ちゃん手伝てくれないかな……?」

「へ?」


わいわい話している三人をほほえましく見ていると、ふいに話を振られてしまって素っ頓狂な声を上げてしまう。え、手伝ってほしいって…


「私でいいの?」

「もちろん!!」

「むしろお願いします!」

「私たち三人だったら食べ物じゃないものができそうだし」

「ふふ、じゃあお引き受けします」


やったあ!と声を上げて喜んでくれる三人に私まで嬉しくなってくる。結局、おいしいお菓子が食べたいという千代ちゃんも交えて今度の休みに誰かの家に集まることにまとまった。誰かの家で可愛い子に囲まれてお菓子作りだなんて私も中学生を満喫してるなあとしみじみ思う。前世ではあんまり目立つ方じゃなかったし、インドアだったし、誰かの家とかあんまりいかなかったよなぁ。それなりに楽しんでたけど、今の方が学生満喫しててちょっと笑えてくる。


「凪、これ誰にあげるの?」

「弟と妹にあげようかなーと思ってるよ」

「ああ、双子の。あってみたいなぁ」

「今度紹介するね」


冷めたケーキを袋詰めして言う作業の途中で千代ちゃんが尋ねてきたので、双子のかわいいかわいい弟と妹を思い起こしながら答える。喜んでくれるかなあ、二人とも。


「千代ちゃんは?」

「自分で食べる。」

「ふふ、そっか」


美味しいものに目がない親友のキラキラした目にくすりと笑いがこぼれる。ほんとにこの子は可愛いなあ。



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