Trip梯

□02
2ページ/2ページ



「手は使わない。足の裏にチャクラを溜めてこうやって歩く。最初は走っていい」

「わー……」


スタスタと木の幹を垂直に歩いていく父。驚きすぎて声がでないっていうのはこうことなんだなってカンジです。はい。
父は地面から一番近い枝まで登ると、そこに蝙蝠のようにぶら下がった。


「とりあえずやってみよう。クナイで登れたところまで印つけるんだぞ」

「はーい」


えーっと?チャクラを足の裏に溜めて…。あ、そういえばチャクラが多すぎるとバキッてなって少ないとツルッてなるんだったよね。気をつけよう。
頭でそんなことを考えながら印を組み、チャクラを練る。足の裏に青い温かさを感じた。クナイをホルスターからだし、意を決して木に向かって走り出した。


「……本当に天才かも知れんな」


父の静かな呟きは空気に溶けていった。


「凪ー!ゆっくりでいいからおりておいでー。……凪ー?」


父が私を呼んでいる。でも、今は下におりる気分じゃない。もっとここにいたい。


いつもより近くにある気がする空は晴天。散り散りに、でも何かの形を成して自由に流れていく白い雲が、青い空に映えている。時折吹く風は心地好い程度の湿気を含んで頬を撫でていき、気持ちいい。自分が登った木より低い木が眼下に広がり、その木々の奥には木の葉の里が木の隙間から見える。
言葉がでない。吹き抜けていく風に身を任せ、このまま空に溶けていきたい気分だ。この景色を、私はきっと忘れない。それこそ、どこの世界に行ってどんなに長い時間が流れても。


「ぅわっ!!」


一際強い風が吹き、私の体は後ろ向きに傾いていく。あ、ヤバい。そう思ったときには、私の体は完全に下降の一途を辿っていた。体に風がびしびし当たる。これはマジでヤバい。思わず目をつぶり、来るであろう衝撃に堪える準備をしたが、私の体は温もりに包まれていた。


「怪我はないか?」

「お…、おとーさーん!!」


落ちる私を抱き留めてくれた父が、神様に見えました。

私は、思わず父に抱き着いた。父はあやすように私の背中を軽くポンポンと叩いてくれた。うわ〜…落ち着く……。


「一回目なのに一番上まで行けたな、すごいぞ凪。でも気は抜くなよ」

「うんっ」


お父さん優しいカッコイイ〜。もう好きです結婚してー!


「さ、今日はここまでにして帰るか。」

「うんー。またいっしょにしゅぎょーしてねー」

「もちろんだ」


私を地面におろし、優しく笑って頭を撫でてくれる。くすぐったい、でも嬉しい。
前世で両親が側にいなかった私は、この温かさに慣れていなくてどこか気恥ずかしい気持ちになる。けど、あったかくて、安心する。

家に帰り、母が用意してくれていた昼食をとった。ご飯作って家で待っててくれる人がいるっていいなあって、この世界に来てから毎日のように感じてる。

家族で食事って、楽しい。嬉しい。


「そうだ。父さんは昼から任務だから、修行は母さんにみてもらうといい」

「うん!おかあさん、いい?」

「もちろん!」


任務か…、大変だなあ。

この日、私は歩いた状態で木の中間ほどまで行けるようになり、両親はまたテンションがあがった。
明日は医療忍術ね!と母が張り切り、父もじゃあ明後日は瞬身の術だな、とワクワクしているようだった。便乗して私も、かげぶんしんやりたーい!と言ってみたら了承してくれた。
……確か禁術になってたとおもうんだけどいいのかな?…いっか。
こんな危ない世界に初っ端から来ちゃったんだ。とりあえず、これから修行がんばろー。


……それより先に、滑舌と運動だな。



_
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ