Trip梯
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木の上からこんにちは。突然ですが、私は今人間観察の真っ最中です。
公園が一望できる程度の高さの枝に登ってぐるりと辺りを見渡す。耳にチャクラを集めて聴覚を上げ、会話を聞く。(最近できるようになりました。)
「チョウジ、それ新作か?」
「そうだよ、シカマルも食べる?」
「じゃあ貰う。」
奈良シカマル、秋道チョウジ。幼なじみ二人組だな。にしてもシカさんはこんないたいけな子供の時代から気怠げなんですね。
「赤丸ー!」
「キャンキャンッ」
あれは犬塚キバと忍犬の赤丸。元気だなぁ。
「やだ、例の子いるじゃない」
ん?例の子?
例の子、という単語が無性に気になったので、ママさんたちの会話に集中することにした。
「ホント、こんなとこに来ないで欲しいわぁ」
「四代目様が亡くなったのだってあの子が」
「しっ!!」
ああ、わかった。よくわかった。
座っていた枝から地面に降り立ち、ゆっくりと歩を進める。
「三代目様も、何であんな子里においておくのかしら」
そらその子が九尾の入れ物になってくれた英雄やからやっちゅうねん。なんにも知らんくせにデカイ口叩くなダァホ。
心の中で反論しながら(怒ると関西弁がねー)、例の子と呼ばれている少年を探して視界に捉える。
独りブランコに座り、周りで遊んでいる子供達を羨ましそうに見つめているその子は私の予想通りの子だった。
うずまきナルト。この世界の主人公。
産まれたときに、うちはマダラに操られた九尾によって両親を殺され、両親の顔も知らずにずっと孤独で生きてきた少年。
捻くれて育ってもおかしくないのに、この少年は底抜けの明るさと真っすぐさを併せ持った素晴らしい人物に成長する。
だからかもしれない。
「ねぇ」
私と似た境遇で育ったのに、あんなに綺麗に育つこの少年に敬意を抱いたから。
「一人?」
前まで原作にも、その原作に関わる人たちとも関わりを持つつもりはなかった私が、
「よかったら一緒に遊ばない?」
話し掛ける気になったのは。
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