Trip梯
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ナルトが手裏剣を投げ込んだ先にいたのは白いユキウサギだった。ちょうど頭のすぐ上の木の幹に手裏剣が刺さっているうさぎは、泡を吹いて気絶していた。
「ナルト!何てことすんのよォ!」
「そ…そんなつもりは…、ゴメンよ うさこう!」
「なんじゃ…うさぎか!」
なるほど。これはおかしい。原作読んだときはパッとしなかったけど、あのユキウサギの毛色は今の季節ではおかしい。今は春。日照時間の長い春はユキウサギの毛色は茶色になるはず。でもいまナルトに抱きしめられているユキウサギは白色。つまり、あれは日があまり当たらない室内で飼われた変わり身用のユキウサギ。
ついに、来たか。
「全員ふせろ!!」
カカシ先生の声にとっさにその場にしゃがみ込む。サスケがタズナさんを、サクラがナルトを地に伏せさせた。ナルトが悲鳴をあげているのが聞こえるが気にしていられない。
……来た!
緊張しすぎて全身に汗をかいているようなカンジがする。
私たちのすぐそばの木の幹に自身の刀を刺してその柄の部分に立ち、こちらを見下ろすガタイの良い男。その男が纏う独特の雰囲気にその場に緊張が漂う。
「へー、こりゃこりゃ。霧隠れの抜け忍、桃地再不斬君じゃないですか」
フレンドリーなカンジでザブザに話しかけたカカシの横で走り出そうとしたナルトをカカシは手で制した。
「邪魔だ。下がってろお前ら。こいつはさっきの奴らとはケタが違う」
カカシの言葉に場の緊張感が増す。
未だに一言も言葉を発しないザブザを全身で警戒する私達を尻目に、カカシ先生はゆっくりとした動作で手を目元にもっていった。
「このままじゃあ…ちとキツイか…」
その様子を見ていたザブザが口を開いた。
「写輪眼のカカシと見受ける…。……悪いがじじいを渡してもらおうか」
写輪眼という単語にサスケが反応を示すが、カカシ先生はどちらにも反応を示さずに指示を出した。
「卍の陣だ、タズナさんを守れ。お前達は戦いに加わるな。それがここでのチームワークだ。……ザブザ、まずは…」
カカシが左目を覆うように着けていた額当てを外した。
「オレと戦え」
額当てに隠された左目には、写輪眼と呼ばれる瞳があった。カカシの写輪眼を見てサスケが写輪眼の解説をする。
要約すると、写輪眼は幻・体・忍術を瞬時に見通し跳ね返すことに加え、相手の技を見極めコピーしてしまう能力があるとのこと。……漫画読んでたときも思ってたけど、写輪眼てチートだと思う。
「さてと……お話はこれぐらいにしとこーぜ。オレはそこのじじいをさっさと殺んなくちゃならねェ」
ザブザがそういうのとほぼ同時に私達はタズナさんを取り囲むように卍の陣をつくる。ザブザは一瞬で水の上に移動し、かなりのチャクラを練り込んでいる。
「忍法…霧隠れの術」
ザブザの姿が黙視できなくなり、全員に動揺がはしる。無音殺人術の達人として知られるザブザはどれほど危険かということをカカシ先生が説明している間にも、どんどん霧が濃くなっていく。
お互いの心臓の鼓動さえ聞こえてきそうな静寂のなか、どこからかザブザの声が響く。
「8箇所。咽頭・脊柱・肺・肝臓・頸静脈に鎖骨下動脈・腎臓・心臓…、……さて…どの急所がいい? クク…」
できれば心臓が…げふんげふん。
再び訪れた静寂。
すると、突然肌を刺すような殺気があたりに充満する。
カカシ先生だ。これが、上忍の殺気。ずっと首筋に刀を突き付けられているような感覚に、体がうまく動かない。
サスケを見れば、震えてすごい汗を流している。サスケでもああなるんだから私なんかが動けないのはあたりまえか。
「サスケ…」
「!」
カカシ先生の優しい声が響く。
「安心しろ。お前達はオレが死んでも守ってやる。」
わずかにこちらに振りかえり、笑みを浮かべたカカシ先生がこちらを安心させるために優しい声でいう。
「オレの仲間は、絶対殺させやしなーいよ!」
カカシ先生がそう言ったとほぼ同時に私達の間に気配が一つ増え、私はハッと振り返った。
「終わりだ」
ザブザが刀を振り回すのをかわし、タズナさんを自分の方に引き寄せて庇う。
さっと周りを伺えばザブザの腹にクナイを刺すカカシ先生とその周りで尻餅をつく皆。誰も傷ついていないのを確認し、ホッと息を吐く。
「(あのガキ、オレの首斬り包丁を避けやがった…)」
一息つく間もなくカカシ先生の後ろにもう一人ザブザが現れ、それを確認したナルトが叫ぶ。
「先生!後ろ!!」
カカシ先生が刺していたはずのザブザが水となって地に落ちた。
実はカカシが刺していたザブザは水分身で、カカシの背後から現れたザブザがカカシを切り裂く。が、そのカカシも水分身。
カカシの本体はザブザの背後に現れザブザの首筋にクナイを当てていた。
「動くな…終わりだ」
「ス…スッゲ――!!」
ここまでの戦闘を見たナルトが感嘆の叫びをあげる。他の三人にも安堵の表情が浮かぶなか、私だけは警戒心を最大まであげたままでいた。
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