Trip梯
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額当てを額に結び付け、口元の血を拭ったナルトは、今までになく逞しく見える。
「クク…、えらい鼻息だが勝算はあるのか」
「お前ら何やってる!逃げろって言ったろ!オレが捕まった時点でもう白黒ついてる!オレ達の任務はタズナさんを守ることだ!それを忘れたのか!?」
ナルトが不安げにタズナさんを見るが、タズナさんは自分のことは気にするなと言ってくれた。それを聞いたナルトとサスケは好戦的な目でザブザを見据える。
「クッ…クックックックッ……」
抑えきれないといった様子で笑うザブザ。
「オレぁよ…お前らくらいの歳の頃にゃ、もうこの手を紅く染めてんだよ…」
そこから語られる血霧の里、霧隠れの里の卒業試験の事実。
同じ釜の飯を食べた仲間同士が殺し会う卒業試験で、100人を超える受験者を皆殺しにした悪鬼。それこそが桃地再不斬。
「楽しかったなぁ……アレは…」
肌を裂くような殺気と悪寒。サスケに支えられていた私は、近づいて来る気配を感じ取った瞬間サスケを突き飛ばした。
「なっ」
「ぐっ!!!」
懐に潜り込まれ、腹部に強烈な一撃を加えられた私の身体は地面と平行に飛んだ。その身体を追い掛けられ、たたきつけられるようにして腹部に拳を受け、私は血を吐きだした。
「ガハッ」
「凪っ!!」
うっすらとする意識を必死につなぎ止め、上半身を起こす。
ナルトが作り出した影分身をぼんやりと見つめながら立ち上がる。
口いっぱいに広がる鉄の味に顔をしかめ、唾として吐き出して口元を袖で拭う。サスケが心配そうな顔で近付いてきたので笑みを向ける
「大丈夫か凪」
「大丈夫、それより」
分身は任せて。
私がそういうのと同時にナルトがサスケに風魔手裏剣を投げ渡す。
「風魔手裏剣、影風車!!」
「手裏剣なんぞオレには通用せんぞ!」
サスケが飛び上がり、手裏剣を投げると同時に駆け出す。サスケが投げた手裏剣が分身を避け、本体に向かって行くのを確認して印を結ぶ。
「なるほど、今度は本体を狙ってきたって訳か…。が…」
本体と水分身どちらも同じ台詞を口にするのを聞きながら素早くザブザの死角に回り込む。
「甘い!!」
「影分身の術!」
五体作り上げた影分身で水分身を取り囲み、一斉に攻撃をしかける。
「一人か」
「水分身なら私一人で充分」
手裏剣とクナイで水分身を翻弄するが、再び首を捕まれてしまった。
「ぐっ」
「充分だぁ?オレ様もこんなガキにナメられたもんだ」
「……ふふっ」
何笑ってやがる、と水分身は青筋を浮かべて低く呟いた。
「作戦成功」
「? なっ!?」
水分身が掴んでいた凪はポンと音をたてて消え、背後から現れた凪の本体に水分身は首を落とされ水にかえった。
「はっ、はっ……はぁーっ…」
疲れたー、呟きながらその場にゆっくりと倒れ込む。殴られたお腹は痛いし、今日は働きすぎだ。
「凪!」
「サクラ…へへっ、やったよー」
「うん…っ、うんっ!」
駆け寄って来てくれたサクラに泣かないで、といって微笑みながらサクラの大きな目から溢れる涙を指の腹で拭う。
「ナルトたち、どうなった?」
「カカシ先生を助けたわ」
「そっか、じゃあ」
大丈夫だね、という言葉は最後まで言えなかった。
サクラが何か言っている気がするが、自分で思っていたより疲弊していたらしい私の身体は休息を求めていて、下がってくる瞼を開けることはできなかった。
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