Trip梯
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光を浴びて輝く氷の結晶と、燃え上がる美しい炎。それらが共存する澄み渡る青空と、青々と緑が茂る草原。そこに私はぽつんと立っていた。
ここ、夢だな。何回目とかは数えてないけど、何回も見た夢だ。
冷静に分析する頭とは対照的に、手には汗がにじんでいた。それは、この空間にいるモノに対して無意識に畏怖を覚えているから。今まで何回見てもこんな感覚を覚えたことはなかったけど、今回は特別なようだ。
ついに、対面かな。
突如、上空に気配を感じる。その気配は嵐なみの空気の流れを生み出しながらゆっくりと私のほうに近づいて来る。
『貴様が私の持ち主か』
鷹だろうか。鋭いながらも優しさを含んだ瞳をこちらに向けた、身の丈をゆうに超えた大きな鳥が舞い降りた。その風圧に周りの炎は揺らめき、草木はざわつく。吹き飛びそうになる体を足裏にためたチャクラで支え、笑みを浮かべて返事をする。
「…そのようだね」
『類い稀なる運命の元に産まれた我が主。私の名を呼ぶがいい』
どうやら自分の魂の一部である斬魄刀には私の情報は全て伝わっているらしい。
『我が名は』
突如、私たちの間を風が吹き抜けた。
そこまでははっきりと聞こえるのに、名前の部分だけが風に邪魔されて聞こえない。
私のかすかな表情の変化から考えを読み取ったのであろう半身は、すこし肩をおとして(そうみえただけだけど)言った。
『主にはまだ聞こえんか。ならば、まだ私を持つには早いということ』
ひたすら私に吹き付ける風を、両腕を顔の前でクロスさせることで防ぎながらも大鷹の話に耳を傾ける。
『呼べ、我が名を。さすれば私は貴様の生涯の力となろう』
待っておるぞ、我が主よ。そこまで聞いて、私の意識は暗闇に沈んだ。
ふと意識が浮上すると、そこは見慣れた部屋だった。もぞりと起き上がり隣を見やるとおばあちゃんが小さな寝息を立てていた。
窓から見える住み割る青空を見ながら、寝起きだというのに妙に覚醒した頭で先程までの夢のことを思い出す。
燃える炎と地面から突き出た氷、青々と茂る草原にここと同じように澄み渡る青空。そこにいた大きな鷹。私の半身。はやく自分の名前を呼んでほしい、そう言っているような気がしたのは錯覚だろうか。いや、たとえ錯覚だとしてもかまわない。
「待っててよ、絶対、」
すぐ会いに行くから。
そっと自分の胸元に手を当てて微笑んだ。
胸が少し暖かいような感じがしたのは、これもまた錯覚なのだろうか。
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