大空と最高僧

□第一話 邂逅から旅立ち
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俺は果てしなく困っていた。
気付けば全く知らない所、何もないただの森に一人でいた。
それだけでも不安になるというのに、歩いても歩いても誰も人がいないという事実に不安は更に煽られる。
先ほど目が覚めた場所から歩き始めて数十分。
代わり映えのしない景色に飽き飽きしていた。
森を抜ける気配は一向にないし、近くに街がある様子もない。
誰かに出会わないかぎり、俺はここで一人。
水もなければ食料もない。
あると言えば、身を守る手段。
確かに、あって困るものではないが、どうせなら水がほしかった。
そんな暗いことを考えていると、茂みの先から、低い男の声が聞こえた。

「三蔵一行がここを通るはずだ。待ち伏せるぞ!」

大勢の男とそのリーダーと思われる男が大声を上げる。

「(大きな声を出してる時点で待ち伏せじゃないよねっ!?)」

そう心の中で突っ込んでみるがしかし、やっと出会えた住人だ。
きっと、ここにずっといたって誰かに遭遇できる可能性は限りなく低いだろう。
それが待ち伏せがどうだのと言っている人であろうと、話しかけた方がいいだろう。
声をかけようと少し前へと踏み出す。
そうしてみた光景に絶句する。
体の浮き上がる紋様。
人の耳と思えないほどに尖った耳。
背格好だけを言えば、人とは言える。
だが、人のようで人でない。
見た目が異様な集団。
更にその手に剣まで握られているのだから尚更だ。
早くここから逃げろと、超直感が警鐘を鳴らす。
とにかく逃げなければと右足を耳の尖った集団に背を向ける方向においた。

パキッ

…とんでもないことをやらかしてしまった。
足元には真っ二つに割れた木の枝。
後悔する俺はきっと今顔面蒼白だろう。

「誰だっ!!?」

ダメツナはこんな場所でも健在らしい。
毎度毎度、色々と面倒ごとをおこす自分がもう嫌になってくる。
とにかく、全速力でその場所から逃げ出す。

「人間だ!人間がいるぞ!!」
「追い掛けろ!!」
「(三蔵一行って人達はいいの!?」)

そんな突っ込みも虚しく心の中に響き、とにかく走ることしかできなかった。
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