大空と最高僧

□第二話 桃源郷と異変
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あれから数時間。
俺はジープに揺られながら、大人しくしていた。
というのも、うるさい二人が両サイドにいて、騒がしくしようもないというのが理由だ。
とにかく、大人しくしていた。
三蔵さんがうるさい二人に遠慮、容赦なくハリセンを取り出して打っ叩く姿を何度も悟空さんと悟浄さんと三蔵さんで繰り返すものだから、さすがに学習する。
正直、叩かれない俺も、叩く瞬間を見ると怖い。
余計なことはしないでおこうなんて誓う。
そしてまぁ、なんだかんだで日は暮れ、夜。
ジープを森近くに止め、全員が下りる。

「今日も野宿かよ……」

悟浄さんがイライラしながら、吸いおわった煙草の吸殻をくしゃと潰す。
さっき悟空さんに聞いたら今日を合わせ、三日連続の野宿らしい。
野宿の辛さは未来に着いたばかりの頃に嫌というほど体感している。
次の街まではまだ数日間ジープを走らせる必要があるらしい。
これからまだまだある野宿生活にため息をついた。
それもこれも、昼寝なんてするからだ。
こうなるのだったら、山本と獄寺くんを誘って、勉強会でもしておけばよかった。
そう後悔したってどうにもならない。
とりあえず俺は八戒さんに手伝えることがないか聞くと、荷下ろしをしてほしいとのことだったから、ジープから荷を下ろしはじめる。
出てくる鍋や、食材を見ると、夕飯を作るらしい。
未来では魚を食べたなあなんて思い出して笑う。
それを少しからかわれたりしたけれど、うまい具合にごまかした。
三人は手慣れた様子で準備していくが、その中になぜか三蔵さんが見当たらない。
どこへ行ったのだろうと気になり、辺りを見回せば、その辺にあったそこそこ大きい岩に座りながら煙草をふかして、傍観していた。
その様子からして、手伝おうという気は全くないらしかった。

「三蔵さんは何もしないんですか?」

疑問をそのまま口に出すと、三人が苦笑いをした。

「三蔵爺ちゃんはいいんだよ。茶すすってジジむさーく新聞読んでる気難しい"爺ちゃん"だからな」

ズガンッ

銃声。
音の先を見れば三蔵さんが悟浄さんに銃を向け、ぶっ放していた。
チッと盛大に舌打ちすると、懐から一本煙草を取り出す。
先ほど一本目を吸い終えたらしい。
いや、それよりも突っ込むところがある。

「なんで銃ぶっ放してんですかっ!?」

一応、守護者を合わせた中で俺は結構な常識人だと思う。
俺の感覚は間違っていない。……大体は。
人間として、普通の反応だ。

「日常茶飯事なので気にしないでください」

にこやかに八戒さんが話してくれた。
…こんなのが日常茶飯事でよく生きていられたと普通に尊敬する。
からかう悟浄さんも悟浄さんだけど、三蔵さんの沸点が低すぎる。

「我慢するのが嫌いなんですよ、三蔵は」
「……よく今までやってこれましたね」

本当にすごいと思う。
雲雀さんよりひどいよ、三蔵さん。

「僕も同感です。」

俺の言葉にくすり、と爽やかな笑顔を浮かべて答えた。
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