大空と最高僧

□第四話 決意せし少年
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旅を始めてから四日と九時間ほど。
街に到着した。
長かった。とにかく長かった。
その一言に尽きた。
身体中が痛いし、疲労感が酷かった。
けれど、俺なんかよりも前から野宿生活を送っていた三蔵さん達からすれば、もっと長かったことだろう。
ジープが止まった途端にやっとかぁとか、歓喜の声が聞こえたし。

「いやぁ、今回は街までの道のりが長かったですね」
「本当だぜ。疲れたっつの。煙草もきれるしよ」

昨夜、悟浄さんの吸っている煙草……ハイライトが尽き、なくまってしまったため、先ほどまで乗っていたジープの上で、ずっとイライラしていたのだ。
おかげで苛つき解消ができなかったためか、悟空さんとの喧嘩が増え、二人の間に座っている俺まで被害をこうむった。
正直言えば、前例二人がうらやましい。
そうは言ったって、八戒さんは運転手だし、三蔵さんは絶対に助手席から動かないだろう。
どう考えても、俺が前列にいけるはずはなかった。
だから、我慢したのだ。
自分を褒め称えてやりたい。

「綱吉も、お疲れ様でした」

八戒に、にこりと優しく労われ、涙腺が潤んできてしまう。
それと共にずっと考えていたものが溢れだしてくる。
思えば、終わってしまったのだ。
この人たちとの旅は。
元々、この街に着いたらお別れという約束だ。
これでおしまい。
わかっていたことだけど、寂しいことに変わりはなかった。
しどろもどろになりながらも、何か伝えることはできないかと、口を開いた。

「えっと……その、お世話になりました。なんもお返しできなくてすみません…あの、だから…」
「何言ってんだツナ」

ギュッと服の裾を掴んで言い淀んでいると、悟空さんが俺の肩を掴んで、笑った。

「ツナも宿来るんだぞ?」
「え?」



なんでも、一文無しであろう俺を街に着いた途端放り出す気か?と八戒さんと悟空さんと悟浄さんの三人で、三蔵さんを説得(という名の脅し)をしたらしい。
悟空さんいわく、「最終的に、八戒が笑顔でねじ伏せた」らしい。
その光景を見ていなくて本当によかったと思う。
それと同時にまだ一緒にいられるのだという喜びがあった。
知らない場所でたった一人っていうのは嫌だったし、純粋に彼らと離れるのは寂しかったから、ありがたい。
そうして、宿まで向かい、部屋をとった。
人数の都合上、三人部屋と二人部屋があるわけだが……

「俺はツナとがいいっ!」
「そうなると俺と猿が一緒の部屋になんねぇといけねぇだろうが。俺は猿と同じ部屋で寝たくねぇっつの」
「悟浄、どうしてあなたが綱吉と同じ部屋なのが前提なんです?」

部屋割りに苦労していた。
これだけの口論を先ほどから続けているのだが、誰一人として退かない。
さすが、と賞賛を送りたくなってくる。

「おい。」

声を掛けられて、バッと振り返れば、三蔵さんに乱雑に鞄を投げ渡された。
渡された茶色いボロボロの鞄は、俺が野宿している間に使っていた鞄だ。
ところどころ穴が開いているのだが、八戒さんの器用さのおかげで、最低限使えるほどに留められている。
そんな鞄を渡され、戸惑っていると、こちらを振り向かず、三蔵さんは歩いていく。

「行くぞ」
「えっ、はい」

びくびくしながら、その後を追いかけると、三蔵さんは先ほどとったばかりの二人部屋の前に止まり、鍵を開けると、そのまま中へと入っていった。
独断でのため、他三人の許可は良いのかと問い掛けてみた。

「あの……いいんですか?」
「くだらん争いに付き合うつもりはねぇ。」

つまり、意味のない争いのために待っているのなら、その辺に居た奴と同室になって、さっさと寛いだ方がいい。
という理由らしい。
それなら俺じゃなくてもよかったのだろうけれど、文句は言えまい。
どうせ、三人とも口論をしていたから、仕方なく俺を選んだのだろう。
他意はないのだと、自分に言い聞かせ、真っ白なシーツの敷かれた、ふかふかのベッドに鞄を置いた。
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